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<スズケンDIアワー> 平成23年2月10日放送内容より スズケン

がん突出痛治療用口腔粘膜吸収剤 フェンタニルクエン酸塩


京都府立医科大学緩和医療学講座 教授
細川 豊史

 ご存じのように、がんは、1981年に本邦での死亡原因の第一位となりました。現在、日本では男性2人に1人、女性3人に1人が 「がん」に罹り、そのうち、3人に1人が、「がん」で亡くなられています。そしてこのがん患者さんの約75%、つまり4人に3人が、がんの痛みを経験するといわれています。この多くのがん患者さんが経験するがん疼痛には、“持続する痛み”と、“がん性突出痛“といわれる何らかの理由で突発的に起こる痛みとがあります。

 今日は、この後者の“がん性突出痛”の病態と評価、および実際の治療法について、また 昨年10月27日に製造承認がおりましたフェンタニルクエン酸塩・口腔粘膜吸収製剤についても簡単にお話します。


icon がん突出性疼痛について

 この突出痛は、英語では breakthrough pain と呼ばれますが、当初は「鎮痛薬の定期投与を受け、良好な鎮痛がえられているがん患者さんに、突発的に一過性に出現または増強する強い痛み」と定義とされていました。
 しかし、英国などでは長い間、「定期投与の鎮痛薬の切れ目に出現する痛み(いわゆる end-of-dose failure)」を突出痛と考えてきた歴史があり、このため、現在でも、国際的な確固とした定義がありません。
 しかし、最近、欧州緩和ケア協会が、「突出痛は持続痛の有無や程度、鎮痛薬治療の有無にかかわらず発生する一過性の痛みの増強である」と規定したため、このような広義な解釈が今や一般的になりつつあります。
 日本緩和医療学会編集の「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2010年度版」も欧州緩和ケア協会の定義に準じて突出痛を扱っています。いずれにしても、突出痛がうまくコントロールされないということは、患者のがん疼痛治療そのものがうまくコントロールされていないということと同じことになります。 このため、突出痛の発生機序を理解し、その治療のためのレスキューの意義と用法とについて熟知し、突出痛をコントロールすることが、がん疼痛治療においてきわめて重要なこととなります。


icon 突出痛の特徴

 突出痛は、発症が急で持続が短いというのが一般的な特徴です。実際には、痛みの発生からピークに達するのに3〜5分、持続時間は15〜30分程度で、ほとんどは1時間以内に治まることが多いと言われています。
 約80%が持続痛の部位に一致して発生し、痛みの質も持続痛と似ていることから、多くは持続痛の一過性増悪と考えられています。
 オピオイドでがん疼痛をコントロールしている患者の70%に発生するとされていますが、主に病期の進行した患者での出現率が高く、当然そのQOLを著しく低下させることになります。


icon 突出痛の分類

 突出痛の分類については、現在のところ国際的に認められた確固としたサブタイプ分類はありません。前述の日本緩和医療学会の「がん疼痛の薬物治療法に関するガイドライン2010年版」では、

    @ 体動時に生じるような発生が予測できる突出痛
    A 原因不明で発生が予測できない突出痛
    B 定期投与の鎮痛薬の切れ目に生じる痛み

の3つに分類されていますが、私はこれに加え、第4番目として

    C 神経障害性疼痛のよる突出痛

を分類に入れて考えるようにしています。

 

提供 : 株式会社スズケン



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