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<スズケンDIアワー> 平成23年3月3日放送内容より スズケン

直接トロンビン阻害経口抗凝固薬 ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩


東京女子医科大学神経内科学 教授
内山 真一郎

 本日はこの度、心房細動患者の脳卒中予防に承認された経口の直接トロンビン阻害薬であるダビガトランエキシラートメタンスルホン酸塩(商品名プラザキサ:以下ダビガトラン)についてお話ししたいと思います。


icon 脳梗塞の病型

脳梗塞の病型

 心房細動は高齢になるほど発症率が高くなります。急激な高齢化の進行により心房細動患者が激増しており、その結果心房細動による脳塞栓症が年々増加しています。最近は脳梗塞が脳卒中全体の3/4を占めていますが、脳梗塞は主な病型としてアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞に分類されます。このうち、増加しているのはアテローム血栓性脳梗塞と心原性脳塞栓症です。アテローム血栓性脳梗塞が増加している原因としては、食生活の欧米化による糖尿病、脂質異常、肥満といった代謝性危険因子の増加が挙げられます。一方、心原性脳塞栓症は心房細動が原因の2/3を占めており、心原性脳塞栓症の増加は、高齢者の増加による心房細動の増加が最大の要因になっていると考えられます。以前は、日本人の脳梗塞は半分以上をラクナ梗塞が占めていましたが、最近ではアテローム血栓性脳梗塞と心原性脳塞栓症が増加しているため、これら3つの病型が1/3ずつを分け合っている状況に変わってきています。
 心原性脳塞栓症は、心臓の中に形成される大きなフィブリン血栓が頸動脈を通じて脳内の動脈に流入し、太い動脈を閉塞しますので、大きな脳梗塞を生じる傾向があります。したがって、3つの病型の中でも最も重症で、生命的・機能的予後が悪いといえます。心房細動の場合には、左心房、特に左心耳に巨大なフィブリン血栓が形成され、遊離して脳内に流れて行くため大きな脳梗塞を生じやすいのが特徴です。


icon 脳塞栓症とワーファリン投与

 このように、心房細動による脳塞栓症は、心臓内に形成されるフィブリン血栓が原因であり、アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞のように、動脈に形成される血小板血栓が原因ではありませんので、抗血小板薬による予防効果は期待できません。心房細動患者の脳塞栓症予防にはワーファリンという抗凝固薬を服用する必要があります。
 しかしながら、ワーファリンには様々な使いにくさがあります。ワーファリンは肝臓で合成されるビタミンK依存性の凝固因子の合成を阻害することにより、抗凝固活性を発揮する薬剤ですので、肝臓のCYP代謝酵素の遺伝子に制御されます。その結果、個人個人で効き方に大きな差が生じるため、血液凝固検査(INR)を毎回行って用量を調節する必要があります。血液凝固検査には時間も手間もかかり、医療費も余計にかかります。また、ワーファリンは肝臓で代謝される、さまざまな薬剤と相互作用が起こり、その作用が弱くなったり、強くなったりしますので、他の薬剤と飲み合わせるときは毎回相互作用の有無をチェックする必要があります。
 さらに、ワーファリンはビタミンK依存性凝固因子の合成を阻害して、間接的にトロンビン阻害作用を発揮する薬剤ですので、ビタミンKをたくさん含んだ食品を摂取してしまうと抗凝固作用が発揮されなくなります。したがって、ビタミンKを大量に含有する納豆、クロレラ、青汁を摂取することは禁じられます。通常は健康や美容に良いとされている緑黄色野菜もビタミンKを豊富に含んでいますので、制限しなければいけません。しかしながら、ビタミンKを制限しすぎると、骨粗鬆症が進行しやすくなるという弊害も出てきます。
 一方、高齢の心房細動患者ほど脳卒中のリスクが高くなりますので、ワーファリンの必要性が高まりますが、高齢の心房細動患者ほどワーファリンによる脳出血のリスクも高まるというジレンマがあります。このジレンマのためにワーファリンの投与を控える一般医家の先生方も少なくありません。

 

提供 : 株式会社スズケン



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