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<スズケンDIアワー> 平成23年5月5日放送内容より スズケン

緊急避妊薬 レボノルゲストレル


家族計画研究センター所長
北村 邦夫

icon 緊急避妊法とは何か

 緊急避妊法とは、避妊しなかった、避妊に失敗した、レイプされた等に引き続いて起こる危険性の高い妊娠を回避するために利用する最後の避妊法です。わが国では「医師の判断と責任」(※)によって、緊急避妊法として卵胞ホルモンと黄体ホルモンからなる配合剤あるいは銅付加子宮内避妊具が長年にわたって使用されてきましたが、ようやく緊急避妊薬『ノルレボ錠』が承認されました。『ノルレボ錠』はレボノルゲストレルという黄体ホルモン剤を主成分としたもので、従来の方法に比べて副作用が少なく、避妊効果が高いことから世界で広く普及しています。 ここでは、新しく登場する緊急避妊薬『ノルレボ錠』を中心にお話をさせていただきます。

(※)昭和49年1月28日(1974年)参議院議員須原昭二氏が「家族計画の指導方法の改善と経口避妊薬の承認に関する質問主意書」を国会法第74条によって提出している。この時の質問とは、避妊法としての適応のないホルモン剤が婦人科医によって処方されている。これは違法ではないかというものであった。これについて当時の田中角栄内閣総理大臣が次のように答弁している。安全性についてはなお疑問があるので、現段階では経口避妊薬を認める考えはなく、医薬品の製造販売業者が承認された以外の効能効果を標榜することは法の禁じるところであるが、使用者がその判断と責任とにおいて使用することは法の禁じるところではない」。


icon 緊急避妊法の歴史と方法

 緊急避妊法の歴史を辿ってみますと、近代的な緊急避妊薬は、1920年代半ば、エストロゲン作用を有する卵巣抽出物質に抗妊娠作用があるとの発見に端を発しています。ヒトへの適応は1960年代からで、レイプ被害を受けた女性に初めて適用されました。当初、高用量のエストロゲンを緊急避妊薬として用いていましたが、重篤な悪心、嘔吐、乳房緊満、頭痛、集中力の低下、めまい、月経痛、腹痛など副作用が深刻であるために、やがて緊急避妊薬としては使用されなくなりました。
 今日わが国で広く使用されてきた緊急避妊法は、エチニル・エストラジオール50μgとノルゲストレル0.5mgを含有する『プラノバール』を、性交の72時間以内に2錠、その12時間後に2錠服用する方法で、開発者であるカナダの研究者アルバート・ヤツペの名を冠してヤツペ法と呼ばれています。これは、1970年代に高用量エストロゲンの代替として開発されたものであり、副作用の発現率もそれまでの緊急避妊薬に比べて低くなっています。
 1999年に『Plan B』として発売され、その後『Postinor』、『NorLevo』の商品名で、世界で最も普及しているとされている緊急避妊薬がレボノルゲストレル法です。1錠中750μgのレボノルゲストレル含有ピルを性交後72時間以内のできるだけ早い時期に1錠、更に12時間後に1錠服用する方法です。レボノルゲストレル法は、ヤツペ法に比べ、避妊効果が高く、副作用の軽減が図られています。最近では、コンプライアンスを高めることを目的に、2錠分を医師の目の前で服用してもらう方法がとられるようになっており、わが国で承認された『ノルレボ錠』もこの用法が示されています。
 また、妊娠経験のある女性が緊急避妊を求めて来院した際には、銅付加子宮内避妊具の使用を推奨しています。というのは、緊急避妊法としての避妊効果が高いだけでなく、性交後120時間以内での挿入が可能であり、さらに緊急避妊の目的が果たせた後には通常の避妊法として継続的に使用できるからです。


icon 緊急避妊法の使用経験

 私どものクリニックでは、1990年代後半から月経困難症などの適用のある『プラノバール』を緊急避妊薬として使用してきました。最近では、2005年3月30日と2009年11月28日に「医薬品輸入報告書」を提出し、「医師個人使用」との目的で厚生労働省関東信越厚生局薬事監視員より承認を得てフランスから入手したレボノルゲストレル法(『ノルレボ錠』)の使用経験を重ねております。
 2000年4月から2010年3月末までの10年間に限って、この2剤の使用経験をご紹介しましょう。

1)緊急避妊法の適応
この10年間に私どもの緊急避妊外来を訪れた女性は822人。その理由としては、コンドームの破損37.3%、避妊せず19.8%、コンドーム脱落15.8%、腟外射精14.6%、コンドームの腟内残留6.4%、レイプ被害3.9%などとなっており、コンドームにまつわる問題が6割にもおよんでいます。レイプ被害に遭遇した際には、親告によって緊急避妊薬が無料で提供される事業が2006年度から実施されています。これは「犯罪被害者等基本法」に基づいて行われているものですが、地方自治体の財政力によって、支援内容に違いがあります。

2)処方例
 緊急避妊薬については、先ほど申し上げましたように、性交後72時間以内に『プラノバール』を2錠、その12時間後に2錠服用する方法、いわゆるヤツペ法がとられてきました。レボノルゲストレルを成分とする『ノルレボ錠』は、性交後72時間以内に750μg錠を2錠、医師の目の前で服用してもらいます。国から承認された以上、今後の緊急避妊ピルは『ノルレボ錠』が使われることになりますが、医師の目の前での単回服用で済むことから、コンプライアンスが高まることは言うまでもありません。 さて、緊急避妊外来を受診した822例の内訳をみますと、緊急避妊を行う必要がなかった、緊急避妊として銅付加子宮内避妊具を使用した、緊急避妊薬を服用したものの妊娠や副作用の有無を確認できなかったなどを除いて結果が判明した者は528例(ヤツペ法210例、レボノルゲストレル法318例)となっています。

 

提供 : 株式会社スズケン



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