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<スズケンDIアワー> 平成23年5月5日放送内容より スズケン

緊急避妊薬 レボノルゲストレル


家族計画研究センター所長
北村 邦夫

icon 避妊効果

 Sonya M.らは、ヤツペ法による妊娠率は3.17%と報告しています。この報告はLancetに掲載されたもので、ヤツペ法(979例)とレボノルゲストレル法(976例)との無作為化比較試験の結果です。ちなみにレボノルゲストレル法での妊娠率は1.13%でした。

 投与条件が異なりますので一概に比較できませんが、私どものクリニックでのヤツペ法による失敗率は2.38%、レボノルゲストレル法では2.20%となっています。月経周期中の妊娠率は約8%と推計されることから、私どものクリニックでの緊急避妊薬服用に伴う妊娠阻止率は概ね70%と計算できます。


icon マイナートラブルについて

 服用に伴うマイナートラブルをみますと、「特になかった」がヤツペ法41.4%、レボノルゲストレル法では94.7%であり、レボノルゲストレル法の安全性、特に悪心、嘔吐発現率にはヤツペ法に比べて際立った違いが認められます。

マイナートラブル

 私どものクリニックでは、先ほど申し上げましたように緊急避妊目的で40人が銅付加子宮内避妊具を使用していますが妊娠例は皆無でした。ただし、銅付加子宮内避妊具の挿入に伴う一般的な副作用である骨盤内感染症、穿孔、出血、腹痛などが起こる可能性について事前に情報を提供しておくことが大切です。


icon 緊急避妊法の作用機序

 それでは、なぜレボノルゲストレル法を使用することで避妊が可能になるのでしょうか。その作用機序について考察してみましょう。

緊急避妊薬の服用後にいつ出血率

 私どものクリニックでの臨床研究では、緊急避妊薬の服用後にいつ出血したかをみますと、ヤツペ法、レボノスゲストレル法ともにいくつかの山が描かれており、作用機序を考察するに十分興味深い結果を得ています。
 緊急避妊薬を服用した場合の薬理作用としては、①視床下部へのnegative-feedback作用によるLH分泌の抑制、②子宮内膜に対する作用、③子宮頸管粘液の性状を変化させるなどの3点が考えられます。
 このうち、①については、排卵前に投与した場合は、LHサージを抑制し、排卵が抑制されること。排卵が抑制された卵胞は、a)退縮する、b)黄体化非破裂卵胞となる、c)予定日より遅延して排卵が生じる、d)排卵、黄体化せずに月経が生じる時期まで卵胞が発育し続ける、のいずれかの経過を辿ると考えられます。一方、排卵時期から排卵直後に投与された場合は、LHの分泌低下が起こり、黄体形成が不十分となり、黄体機能不全、その結果としてのプロゲステロンの分泌が低下します。
 ②については、排卵後のプロゲステロンの上昇より前に緊急避妊薬を服用した場合は、子宮内膜が多量の黄体ホルモン剤の影響により、より早期に分泌期内膜に変化し、着床障害が生じると考えられます。
 ホルモン剤を使用しない自然周期では、プロゲステロンの働きで、胚がもっとも着床しやすい胚受容期“implantation window”が排卵後5~7日に現れるといわれています。これは電子顕微鏡下でpinopodeと呼ばれる細胞表面構造としてみることができますが、多量の黄体ホルモン剤を服用しますと、このimplantation windowが早期に出現し、胚の子宮内膜への到達時期の子宮内膜の胚受容能の不一致により、着床が疎外される可能性が出てきます。生殖補助医療で卵巣を刺激した周期では、implantation windowが前倒しになるといわれていることなどがこれを裏付けています。
 また③については、特に黄体ホルモン剤には子宮頸管粘液の粘稠度を変化させる働きがありますが、緊急避妊薬は性交後に服用するものであることから、よほど早期に服用しない限りはこの薬理作用は影響しないと考えられます。
 以上、緊急避妊薬、特に『ノルレボ錠』の作用機序を中心にお話して参りましたが、結論的には、その主作用はLHサージの抑制と遅延で、これに子宮内膜に対する付帯的な効果を有すると考えるのが妥当だと思われます。

いずれにせよ、生殖医学の領域では、妊娠は受精の時点ではなく、着床の時点で成立すると規定されておりますので、緊急避妊法は早期人工妊娠中絶とはみなされてはいません。

 

提供 : 株式会社スズケン



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