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<スズケンDIアワー> 平成23年6月30日放送内容より スズケン

慢性疼痛治療用配合剤 トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン


近畿大学奈良病院整形外科・リウマチ科教授
宗圓 聰

 本日は慢性疼痛治療用配合剤として新たに承認されましたトラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤についてご紹介いたします。最初に疼痛とその治療に関しての総論を述べた後に薬剤の紹介をさせて頂きます。

icon 痛みの定義と分類

 国際疼痛学会による定義では、痛みとは,実際の組織損傷、あるいは潜在的な組織損傷と関連した、またはこのような組織損傷と関連して述べられる不快な感覚的・情動的体験とされます。痛みの原因による分類として、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛があります。
 侵害受容性疼痛は、侵害受容器が活性化することによって引き起こされる疼痛で、第一選択薬は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、第二選択はアセトアミノフェンなどの非オピオイド鎮痛薬、第三選択はオピオイド鎮痛薬とされます。神経障害性疼痛は体性感覚系に対する損傷や疾患の直接的結果として生じている疼痛で、国際疼痛学会治療ガイドラインによれば、第一選択薬はカルシウムチャネルα2δ(デルタ)リガンドであるプレガバリン、三環系抗うつ薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、第二選択薬はオピオイド、トラマドール、第三選択薬は抗てんかん薬、抗うつ薬などとされます。

慢性疼痛

 また、疼痛はその持続期間により急性疼痛と慢性疼痛に分類されます。急性疼痛は持続期間が1カ月未満で、通常明らかな末梢(局所)における組織損傷があり、神経系の活動亢進を伴いますが、原因の治癒とともに疼痛は消失し、いわば防御機能として働いていると言えます。そして、NSAIDsなど通常の鎮痛薬でコントロールできます。
 一方、慢性疼痛は持続期間としては、3〜6カ月以上で、中枢神経系の機能変化をきたし、推定治療期間を超えて持続する疼痛であり、痛み自体が病気と考えるべきであり、健康や機能を障害するとともにNSAIDsなどの通常の鎮痛薬はあまり効果がありません。

icon 慢性疼痛の治療

 慢性疼痛に対する治療法としては、薬物療法、神経ブロック、光線治療、イオントフォレーシス、電気刺激療法、手術、理学療法、心理療法などがあります。薬物治療としては、NSAIDs、アセトアミノフェン、トラマドールなどの非オピオイド鎮痛薬、オピオイド鎮痛薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不安薬、抗不整脈薬などの鎮痛補助薬があります。
 アセトアミノフェンはNSAIDsと異なりシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害活性が弱く、抗炎症作用も明らかでないため、NSAIDsには分類されませんが、鎮痛・解熱薬です。アセトアミノフェンは、視床下部の体温中枢に直接作用して熱放散を増大させることにより解熱作用を発揮するとされます。鎮痛作用については弱いCOX阻害作用やその他のメカニズムの報告がありますが、主に疼痛閾値を上昇させることによるとされています。NSAIDsと異なり消化管障害、腎障害、心血管系障害などは少ないとされますが、肝障害には留意する必要があります。また、小児や妊婦にも安全に使用可能であるとともに高齢者にも使いやすい特徴があります。わが国のアセトアミノフェンの適応症は、頭痛、耳の疼痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、急性上気道炎における解熱、鎮痛、小児科領域における解熱、鎮痛とされます。一方、海外では関節炎の適応もあり、多くの変形性関節症の治療ガイドラインでは第一選択薬として記載されています。投与量は成人では1回300〜500mg、1日900〜1,500mgで適宜増減可とされてきましたが、本年1月より1回1,000mgまでで、海外のガイドラインと同様に1日4gまで投与可能となりました。禁忌は、消化性潰瘍、重篤な血流異常、肝障害、腎障害、心不全、本剤への過敏症、アスピリン喘息です。
 トラマドール塩酸塩は、オピオイドμ受容体に対する部分アゴニスト作用を有し、弱オピオイドとしてコデインの代替薬として使用されますが、法的規制上は医療用麻薬や向精神薬ではなく一般医薬品に分類されます。また、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、下行性抑制系神経系を腑活し鎮痛効果を発揮します。適応症は軽度から中等度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛とされますが、海外の変形性関節症に関するガイドラインの一部はアセトアミノフェンとともにトラマドールを第一選択薬や第二選択薬に挙げています。投与量については、1回25〜75mgを1日4回、4〜6時間毎の定時に投与し、1回100mg、1日400mgまでとされ、副作用は他のオピオイドと同様に悪心、嘔吐、傾眠、便秘などがあります。

 

提供 : 株式会社スズケン



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