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<スズケンDIアワー> 平成23年7月28日放送内容より スズケン

抗うつ薬(SSRI) エスシタロプラムシュウ酸塩


日本医科大学千葉北総病院メンタルヘルス科部長
木村 真人

icon うつ病の現状

 薬剤の紹介をする前に、うつ病の現状をお示ししたいと思います。健全な生活を阻害する疾患として、WHOが障害調整生存年率による機能障害の程度をあらゆる疾患を含めて順位付けした表によれば,2004年には第3位であったうつ病が2030年には第1位になることが予測されており、現代のストレスの多い社会のなかで、現代人はうつ病にかかりやすい状況下にあると考えられます。
 昨今のうつ病に対する国内外での対策状況としては、昨年(2010年)5月に日本精神神経学会や日本うつ病学会など、うつ病の治療・研究にかかわる4学会は「うつ病」を「がんに次ぐ重大な社会的損失をもたらす疾病」として位置づけ、その対策などに緊急に取り組むように求める共同宣言を採択しました。また、先進諸国ではすでに「うつ病」をはじめとする精神疾患を「がん」や「心臓疾患」とならぶ三大疾患として位置づけ、国家政策の最優先課題の一つとしております。この様に、うつ病については国内外問わずその対策は喫緊の課題になっています。
 うつ病は抑うつ気分などの精神症状だけでなく、睡眠障害、疲労倦怠感、食欲低下、頭痛・頭重感、体の痛みなどの身体症状が比較的高頻度で出現します。その結果、うつ病患者のおよそ2/3は、主に「身体症状」を訴えて、まず内科を受診します。精神科もしくは心療内科を初診するケースは併せても10%程度であることから、プライマリーの先生方が「うつ病」を正しく診断し、治療に導くことは、大変重要なことだと思います。この様な状況下で、本邦でのエスシタロプラムシュウ酸塩(以下エスシタロプラム)の製造販売承認は、新たなうつ病治療の選択肢として期待されるものと考えられます。

icon エスシタロプラムシュウ酸塩の特徴

 エスシタロプラムの製剤概要をこちらにお示しいたします。

エスシタロプラムの製剤概要

 エスシタロプラム(商品名:レクサプロ錠10mg)の効能・効果は「うつ病、うつ状態」となります。薬理作用は選択的セロトニン再取り込み阻害作用に基づいた抗うつ効果となります。エスシタロプラムは肝臓で代謝を受け、主にCYP2C19、そしてCYP3A4、CYP2D6でも代謝されます。血中半減期は10mg反復投与時で約38時間でした。製剤はエスシタロプラム10mgを含有するフィルムコート錠の1製剤のみとなっております。用法・用量は1日1回夕食後に10mgを投与し、最高用量は20mgとなります。なお、海外では大うつ病性障害の他に、全般性不安障害、社交不安障害、強迫性障害、パニック障害、月経前不快気分障害などの適応を取得しております。


ヒト5−HTトランスポータに対する選択性

 エスシタロプラムの特徴の一つとして、各種モノアミントランスポータの中でセロトニントランスポータに対する高い選択性があります。ここに示した図は、縦軸が ドパミントランスポータに対する5-HTトランスポータへの親和性の比、横軸がノルアドレナリントランスポータに対する5-HTトランスポータへの親和性の比を示したものですが、エスシタロプラムは、他のSSRIに比べてセロトニントランスポータに対する高い選択的親和性を有します。このセロトニントランスポータへの高い選択性は、薬効の大部分をセロトニン再取り込み阻害作用で説明でき、臨床的に他の機序により引き起こされる有害作用が少ない可能性が考えられます。


各種CYP活性に対する阻害作用

 エスシタロプラムの薬物相互作用をご紹介させて頂きます。上記の表は国内で販売されているSSRI、SNRIの肝代謝酵素の阻害作用についてまとめておりますが、エスシタロプラムはCYP2D6以外の酵素をほとんど阻害せず、CYP2D6に対しても、有効血中濃度よりも高濃度でしか阻害作用を示しません。従ってエスシタロプラムは、他の薬剤を併用される患者さまにも、比較的安心して処方できる抗うつ剤であると思われます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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