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<スズケンDIアワー> 平成23年8月4日放送内容より スズケン

乳がん治療薬 エリブリンメシル酸塩


群馬大学臓器病態外科学准教授
堀口 淳

 エリブリンメシル酸塩(商品名:ハラヴェン)は本年4月に手術不能または再発乳がんに対する治療薬として承認された静脈内投与の抗悪性腫瘍剤です。

icon 乳がんについて

 乳がんは年々増加しており、現在、女性の最もかかりやすい「がん」となっています。特に、仕事や子育てなどに忙しい比較的若い40歳代の女性が罹患しやすいのが特徴です。一般に、乳がんの治療は局所治療として手術や放射線療法が行われ、全身治療としては内分泌療法、化学療法、分子標的治療などの薬物治療が行われます。乳がんの初期治療は治癒を目指して行われますが、転移・再発乳がんでは一部の局所再発や局所進行乳がんを除いて、治癒は望めないため、延命やQOLの維持を目的として治療が行われます。転移・再発乳がんの薬物治療は、治療効果予測因子であるホルモン受容体やHER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type 2)の発現を参考にして決定します。これらの腫瘍の性格と患者因子を総合的に判断して、Hortobagyiが提唱している転移・再発乳がんの治療アルゴリズムやNCCNのガイドラインなどに沿って治療法を決定します。


icon 転移・再発乳がんの治療

 Hortobagyiのアルゴリズムでは転移・再発乳がんの治療はlife threateningな転移、つまり生命に危険を及ぶすような転移であるかどうかにより治療方針が異なります。生命にすぐに影響を及ぼす心配がなければ、ホルモン感受性のある乳がんには内分泌療法から、life threateningな転移の場合かまたはホルモン感受性のない乳がんには化学療法から治療を開始します。化学療法は標準的にはアントラサイクリン系やタキサン系の抗がん剤を使用し、三次治療以降はビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカン、経口FU系抗がん剤などが用いられます。一次化学療法の奏効率は30-60%であるのに対して、三次以降の化学療法の効果は期待しづらくなります。 エリブリンメシル酸塩は手術不能または再発乳がん、なかでもアントラサイクリン系、タキサン系抗がん剤の既治療の増悪または再発乳がんを対象としており、多くは三次化学療法以降の乳がんが対象となります。現在まで、三次化学療法以降は有効な治療法がなく、エリブリンメシル酸塩に期待が寄せられています。海外の第III相試験では、アントラサイクリン系抗がん剤とタキサン系抗がん剤の既治療乳がん患者を対象として、生存期間の有意な延長が認められており、エリブリンメシル酸塩は三次以降の乳がん治療においても有効であると考えられます。


icon エリブリンメシル酸塩の臨床開発

 エリブリンメシル酸塩は、神奈川県三浦半島の油壺で採取された海綿動物のクロイソカイメンから単離、構造決定されたハリコンドリン Bという物質の合成誘導体です。チューブリン重合を阻害し、微小管の伸長を抑制することにより正常な紡錘体形成を妨げ、細胞分裂を停止、アポトーシスを誘導し、抗腫瘍効果を発揮します。 エリブリンメシル酸塩の臨床開発は、海外では2002年より米国国立がん研究所で、国内では2006年より第T相試験が開始され、その後の第V相試験で、有意な全生存期間の延長を認めたことから、2010年3月30日、日米欧が同日に製造販売承認申請を行い、2010年11月に米国、2011年3月に欧州、4月に日本において、手術不能または再発乳がんに対する治療薬として承認されました。 国内第I相試験は日本人の固形がん患者にけるエリブリンメシル酸塩の用量制限毒性を検討し、最大耐用量を推定する目的で行われました。標準治療法がないかまたは抵抗性となった固形がん患者15人を対象とし、エリブリンメシル酸塩0.7 mg/u、1.0 mg/u、1.4 mg/m2または2.0mg/uを第1日目と8日目に、2分から10分かけて、静脈内投与し、21日を1サイクルとして反復投与しました。用量制限毒性は第1サイクルにおいて、エリブリンメシル酸塩1.4 mg/u群の6例中2例に、エリブリンメシル酸塩2.0 mg/u群の3例中3例に認められ、推奨用量は1.4mg/uと決定されました。国内第I相試験での主な用量制限毒性は好中球減少および発熱性好中球減少症でした。

 

提供 : 株式会社スズケン



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