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<スズケンDIアワー> 平成23年8月11日放送内容より スズケン

腎性貧血治療薬 エポエチンベータペゴル(遺伝子組換え)


東京女子医科大学第四内科教授
新田 孝作

icon 腎性貧血におけるESA治療の意義

 腎性貧血は、腎機能の低下に伴う内因性エリスロポエチン(EPO)の産生低下によって発症します。また、腎不全あるいは尿毒症によって赤血球の寿命が短縮し、造血細胞のEPO反応性が低下することも腎性貧血の発症に関与していることが明らかになっています。


ESA治療は、保存期CKD患者の予後を改善する

 腎性貧血を放置すると、慢性腎臓病(CKD)が進展して末期腎不全になる頻度が高くなり、さらにCKDに合併する心血管疾患の発症頻度も高くなることが知られています。そこで、腎性貧血に対しては赤血球造血刺激因子製剤(ESA)による治療が推奨されています。実際、腎性貧血は末期腎不全への独立した危険因子であることが報告されております。保存期CKD患者をESA治療群と非治療群に分けて検討したところ、ESA治療群で腎生存率が有意に良好であったことが報告され、腎性貧血に対するESA治療の意義が明らかになっています。
 また、心不全患者の貧血を治療すると、腎機能だけでなく心機能の改善が認められることが明らかになり、心疾患・CKD・貧血が互いに影響し合って悪循環を形成する“Cardio-Renal-Anemia Syndrome(心腎貧血症候群)”という概念が提唱されています。さらに、ESAによる腎性貧血の治療は記憶力や意欲、QOLを改善し、入院リスクを軽減し、透析患者の生命予後改善にも寄与していることが明らかになってきました。
   ESAは腎臓で産生されるEPOと類似の構造を持つペプチド製剤で、骨髄中の赤芽球系前駆細胞に働き、赤血球への分化と増殖を促すことで、腎性貧血を改善します。一般に、CKDのstage3(eGFR<60mL/分/1.73u未満)から腎性貧血が増加するといわれていますが、腎機能が比較的良好でも腎性貧血を発症している患者は少なくありません。つまり「腎機能がある程度悪くならないと腎性貧血を起こさないというのは誤解であり、特に糖尿病性腎症ではごく早期から、腎性貧血が発症しているケースがみられます。また、腎機能が悪化しないと、ESAを投与できないと考えている医師も少なくありません。初期のCKDでも、腎性貧血が見られる場合には、積極的なESA治療が必要になります。

icon わが国におけるESA治療の状況

 わが国におけるESA治療の状況は、1990年に透析患者における腎性貧血の治療に遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン製剤(エポエチンα、エポエチンβ)の使用が可能となり、1994年にはCKD患者にも適応が拡大されました。これまで、わが国の臨床で使用可能なESAとしては、上記の2剤とエポエチンαの半減期を約3倍に延長したダルベポエチンαの3剤でした。
 腎性貧血に対するESA投与治療は、“腎性貧血と診断され、複数回の検査でヘモグロビン(Hb)値が11g/dL未満になった時点”に開始し、透析患者ではHb値10?12g/dL、CKD患者では11?13g/dLを治療目標とすることが推奨されています。一方、この治療目標を維持できないと予後改善が望めないため、既存のESA治療では、透析患者において週に2?3回静脈内投与するケースも少なくなかった訳です。また、治療目標を達成できない場合は、ESAの投与量を増やすことが求められますが、「透析患者には医療費包括化が適用され、CKD患者にも12000IU/月と使用量に上限が設定されているため、治療目標を達成・維持できない患者も少なくありません。そこで、既存のESAと比較して非常に長い血中濃度半減期を実現した新しいESAの登場が切望されていました。

 

提供 : 株式会社スズケン



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