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<スズケンDIアワー> 平成23年9月8日放送内容より スズケン

プロトンポンプ阻害消化性潰瘍治療薬 エソメプラゾールマグネシウム水和物


東北大学病院総合診療部教授
本郷 道夫

icon 胃酸疾患治療薬の歴史

 胃酸分泌を抑制することで臨床的効果が得られる病態を酸関連疾患と呼びます。逆流性食道炎は食道への胃酸逆流がその原因です。消化性潰瘍はピロリ菌感染が大きな役割を果たしますが、潰瘍治療ばかりでなくピロリ菌除菌においても酸分泌抑制が重要になります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)連用時の胃粘膜傷害・潰瘍の治療、そしてガストリン産生腫瘍による消化性潰瘍および多彩な消化器症状を示すZollinger-Ellison症候群の治療なども酸分泌抑制が治療的効果をもたらします。

上部消化管臨床の変遷

 薬剤による酸分泌抑制はふるくは抗コリン作動薬、抗ムスカリン薬により行われ、選択的M1受容体拮抗薬も出現しましたが、必ずしも充分な臨床的効果が得られたとは言えませんでした。1970年代後半にヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)が強力な酸分泌抑制薬として華々しく登場しました。H2ブロッカーの市場導入により、日本国内では消化性潰瘍の外科的治療は劇的に減少し、消化器臨床に大きな影響を与えました。
 H2ブロッカーが臨床に導入されて間もない1980年代初頭、欧米では逆流性食道炎が急速に増加し始め、日本でも1990年代から急速に増加の傾向を示してきました。さらに1980年代前半にピロリ菌が発見され、1990年代になって消化性潰瘍の根本的治療につながるピロリ菌の除菌法が確立されました。そのため、消化器臨床では、逆流性食道炎の治療とピロリ菌の除菌治療は重要な治療手段となってきました。プロトンポンプ阻害薬(PPI)の登場の時期はHP関連疾患の減少、そして除菌治療法の確立と、そしてHP非感染者に多く、高栄養による肥満との関連が大きいGERDの増加、長期にわたるNSAIDを必要とする関節リウマチや低用量アスピリンの連用を必要とする病態の頻度が高い高齢者人口の増加など、疾病構造の大変革の時期と同期したと言っても過言ではありません。


icon プロトンポンプ阻害薬の登場

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、イミダゾール環をもつH2ブロッカーの効果をさらに強化することを目的にベンツイミダゾール環を追加した化合物を模索する中から生まれました。つまり、スーパーH2ブロッカーというコンセプトから開発が始まったと言ってもいいのではないかと私は考えています。そうではありますが、H2ブロッカーが胃の壁細胞のヒスタミンH2受容体に作用するのに対し、新しい化合物は壁細胞の酸分泌を担うプロトンポンプに作用することが確認されたため、プロトンポンプ阻害薬(PPI)という新しいカテゴリーの薬剤になりました。H2ブロッカーの効果を上回る酸分泌抑制薬として多いに注目されましたが、その当時まで消化器臨床の中心的病態であった消化性潰瘍治療の面では、H2ブロッカーの効果をやや上回る程度の成績に留まっていました。しかし、急速に増加しつつあった逆流性食道炎の治療においてはH2ブロッカーに比してPPIでは画期的に優れた治療成績が得られることが明らかになり、大きく注目されるようになりました。逆流性食道炎および関連病態の非びらん性逆流症をあわせて胃食道逆流症(GERD)と呼びますが、昨年(2010年)発表された日本消化器病学会のGERD診療ガイドラインでは、GERD治療のファーストチョイスはPPIであることを数多くのエビデンスをもとに断言しています。さらにピロリ菌除菌においては抗生物質の効果を高めるために充分な酸分泌抑制が必要であることがわかり、ここでもPPIの評価は大きく高まりました。

 

提供 : 株式会社スズケン



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