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<スズケンDIアワー> 平成23年10月6日放送内容より スズケン

選択的β3受容体作動過活動膀胱治療薬 ミラベグロン


日本大学泌尿器科学分野教授
橋 悟

 本日は過活動膀胱治療剤である選択的β3アドレナリン受容体作動薬、ミラベグロンについてお話しします。

icon 過活動膀胱の病態

 過活動膀胱は英語では、overactive bladderといい、OABと略されます。過活動膀胱は尿意切迫感を必須症状とした症状症候群で、2002年に国際禁制学会で定義された疾患概念です。尿意切迫感とは、急に起こる、こらえられない強い尿意で、我慢することが困難な愁訴です。通常は頻尿と夜間頻尿を伴い、ときに切迫性尿失禁も認めます。 2002年に実施された、我が国での40歳以上の男女約4000人を対象とした疫学調査によりますと、全体の12.4%に過活動膀胱を認めました。したがって推定ですが、約810万人、つまり40歳以上の人口の8人に1人がOABの患者であることが判りました。高齢社会となったわが国において、まさに生活の質、QOLを著しく損ねる泌尿器領域の疾患として、近年クローズアップされています。

icon OABの診断と治療

 OABは尿意切迫感・頻尿・夜間頻尿・切迫性尿失禁といった症状に基づいて診断出来ますが、類似した症状を起こす可能性のある他疾患、例えば、膀胱癌、膀胱炎、膀胱結石、前立腺癌などを除外する必要があります。
 OABの治療は、骨盤底筋体操や膀胱訓練などの理学療法の他は、薬物療法が中心となります。その代表的薬剤は抗コリン薬です。抗コリン薬は過活動膀胱診療ガイドラインにおいても推奨グレードAとなっています。中でも、この数年で承認になった新しい薬剤は、膀胱選択性に優れ、抗コリン薬特有の副作用である口内乾燥・便秘が軽減されています。しかしながら、そのような副作用で困っている患者さんはまだいらっしゃいます。したがって、OAB治療剤として抗コリン薬と同等以上の効果を示し、かつ副作用の少ない新しい薬剤の開発が望まれてきました。 そのような背景から生まれたのが、ミラベグロンです。

icon ミラベグロンの作用機序

 Oミラベグロンは選択的β3アドレナリン受容体作動性の過活動膀胱治療薬です。そして抗コリン薬とは異なる作用機序を有する、新しいOAB治療薬として期待されています。日本で生まれ、国内外で開発が進められ、このたび、世界に先駆けて日本で発売されました。

 では、ミラベグロンの過活動膀胱に対する作用機序を説明します。
 はじめに、正常な蓄尿期と過活動膀胱の蓄尿期の違いについてお話しします。正常な下部尿路機能は排尿機能と蓄尿機能から構成されています。この蓄尿機能が障害されると蓄尿症状が発症します。蓄尿期には交感神経終末よりノルアドレナリンが放出され、膀胱のβ3受容体を介して膀胱が弛緩するとともに、α1受容体を介して尿道が収縮します。排尿期にはノルアドレナリンの放出が抑制され、尿道が弛緩するとともに副交感神経終末からアセチルコリンが放出され、ムスカリン受容体を介して膀胱が収縮します。 ところが、OABでは、蓄尿期においてもアセチルコリンが放出され続けて、膀胱のムスカリン受容体に結合するので、膀胱の異常な収縮が起こります。このため、OABでは、膀胱の弛緩が起こらず、あまり尿が溜まっていなくてもトイレに行きたいということになります。
 OAB治療薬はどのように働くかを説明します。

抗コリン薬とβ3受容体作動薬の作用機序

 まずは抗コリン薬です。抗コリン薬は、膀胱のムスカリン受容体に結合し、アセチルコリンとムスカリン受容体の結合を阻害します。これにより、アセチルコリンによって引き起こされていた膀胱の異常な収縮が抑制され、OABが改善されます。 一方、ミラベグロンは、膀胱のβ3受容体に結合して、ノルアドレナリンによる膀胱の弛緩作用を増強します。その結果、膀胱容量が増大しOABを改善します。
 このように同じ、OAB治療薬でも、抗コリン薬とミラベグロンでは作用機序が異なっていることがお分かりいただけたと思います。

 

提供 : 株式会社スズケン



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