→ 番組表はこちら
→ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成23年11月3日放送内容より スズケン

経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン


新潟大学病院小児科特任助教
大石 智洋

icon 経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチンの有効性

 次に、このようなロタウイルス感染症に対し、ロタウイルスワクチンの有効性はどの程度であるのかお話しします。
 海外では、今回、日本で承認された経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン(商品名:ロタリックス)が、2011年6月現在で世界120カ国以上にてすでに承認されています。したがって、ワクチンの効果に関する数々のデータが報告されています。

ロタリックス®の有効性

 欧州のデータでは、ワクチン接種後最初のシーズンにおいて、ロタウイルス胃腸炎の発症に対する有効率は87%、重症ロタウイルス胃腸炎に対する有効率は96%、そしてロタウイルス胃腸炎による入院に対する有効率は実に100%でした。ワクチン接種後2シーズン目の調査においてもロタウイルス胃腸炎の発症に対して79%、重症化に対して90%、そして入院に対して96%といずれも高い有効率を維持していました。このように、ロタウイルス胃腸炎に対し非常に高い有効率を示す、非常に有効なワクチンであるといえます。
 また、実際の臨床効果のみならず、経済的効果も指摘されています。

医療経済効果

 大阪労災病院の川村先生のデータによると、ロタウイルス感染症により子どもが医療機関を受診した場合の支出として、医療費、通院費などの医療費以外、そして家族の欠勤日数などの労働損失を計算すると、ロタウイルス胃腸炎により、1家族当たり約39000円の経済的負担を強いられると計算されます。海外のワクチン費用を日本にも当てはめ、もし仮に1回1万円のワクチン費用としても、経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチンは2回の接種ですのでワクチン費用は2万円であり、医療機関を受診した場合に支出として試算される額が39000円であるため、費用対効果が高いことがわかります。そして、これが日本全体となると、ロタウイルス胃腸炎による総疾病負担額が実に540億円と計算されるため、もし日本で経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチンが普及すれば、非常に高い費用対効果が期待できると思われます。

icon 安全性について

 次に、ロタウイルスワクチンの安全性についてお話します。
 以前、米国で1998 年に認可されたロタウイルスワクチン、RotaShieldの接種によって、腸重積を起こす確率が高くなるとされ、ワクチン接種が中止となった経緯がありました。腸重積とは、腸の近位部が遠位部に入り込んで起きる疾患で、特に6か月以降の乳児に多く、腸が入り込むことによって、腸間膜血管の浮腫と圧迫が引き起こされ、進行すると、動脈閉塞、壊死、腸穿孔などを起こし、手術が必要となります。

腸重積症発現相対リスク

 このたび日本で承認された経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチンにおいて、ラテンアメリカ11 カ国とフィンランドを中心に、63,255 人という多大な数の乳児を対象に、ワクチン被接種群とプラセボ、すなわち偽薬被接種群とに分け、腸重積発症の有無につき追跡するという大規模な調査が行われました。調査の結果、ワクチン被接種群とプラセボ被接種群とで腸重積の発症に関して差はないことが証明されました。
 もう一つ、このワクチンは経口の生ワクチンで、腸管でワクチン株が増殖するので、安全性を検討する際に、腸管で増殖したワクチン株が悪い影響を及ぼさないかを考える必要があります。確かに、実際のところワクチン接種1ヵ月以内に2~3割の児にワクチン株の便排泄を認めます。しかしながら、ワクチン被接種群とプラセボ被接種群との比較において胃腸炎様症状の発症に有意な差は認めなかったことから、ワクチン接種により接種を受けた児がロタウイルス胃腸炎に罹患する心配は殆どないと考えられます。

 

提供 : 株式会社スズケン



前項へ 1 2 3 次項へ