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<スズケンDIアワー> 平成23年12月1日放送内容より スズケン

日本薬剤疫学会第17回学術総会「薬剤疫学と医療データベース」


国際医療福祉大学薬学部教授
池田 俊也

icon はじめに

 2011年11月5日と6日の2日間にわたり、慶應義塾大学芝共立キャンパスにて日本薬剤疫学会第17回学術総会を開催させていただきました。

日本薬剤疫学会

 薬剤疫学という学問領域には馴染みのない先生方もいらっしゃるかもしれません。著名な薬剤疫学者である米国ペンシルバニア大学のStrom教授は、薬剤疫学を「人の集団における薬物の使用とその効果や影響を研究する学問」と定義しています。「人の集団における薬物の使用」は医療現場での医薬品の使用を意味しますから、薬剤疫学は主として市販後の医薬品の使用実態に適用されるものです。また、「効果や影響」というのは、有効性のみならず、安全性、そして、経済性も含んでいます。
 薬剤には、有効性によるベネフィットが期待される反面で、有害事象や副作用が発生するリスクが伴います。また、近年開発された新規薬剤の中には分子標的薬など高額なものも多く、その費用対効果も問題となります。薬剤疫学の研究成果は、リスクを小さくベネフィットを大きくする医薬品の使い方を確立し、薬害等を防止するうえでも重要な学問領域といえます。また、コストとベネフィットのバランスを考えた「適正使用」の確立に寄与するものとなります。
 日本ではまだ薬剤疫学に関わる研究者が少ないのが実情ですが、今回の学術総会では300名を超える方々に参加頂き、大きなトラブルもなく終了することができました。学術総会へのご参加ならびにご支援・ご協力を賜りました皆様にはこの場をお借りし厚く御礼を申し上げます。

icon メインテーマについて

 薬剤疫学研究を行うためには、薬剤の市販後における診療や処方に関するデータベースが有用です。諸外国では、薬剤疫学研究を行うために利用可能な医療データベースが多数存在し、研究が非常に活発化しています。たとえば、民間医療保険が主体の米国では民間保険会社が作成しているデータベースが複数あり、それぞれ数十万人から数百万人規模の患者の診療データが登録されています。また、公的医療保険が主体のカナダやヨーロッパでは、各国において処方データや診療報酬請求等のデータベースを用いた分析が行われています。これらのデータベースを用いた最近の研究事例として、我が国で開発された経口抗糖尿病薬であるピオグリタゾン服用による膀胱がん発生のリスクについて分析をしたものがあります。ピオグリタゾンは動物実験において膀胱がん発生のリスクが認められており、人に対する影響についても懸念されていましたが市販前の治験では症例数が少なくまた観察期間も短かったことから、その影響が確認できておらず、市販後の薬剤疫学研究での確認が求められていました。米国ではカイザーパーマネンテという保険会社のデータベースを用いて分析が行われ、また、フランスでは、診療報酬請求のデータを用いて分析が行われました。その結果、人に対しても膀胱がん発生のリスクがわずかながら高まることが確認されています。
 わが国では医療データベースの整備が遅れておりデータベースを用いた薬剤疫学研究は立ち遅れていましたが、近年、医療データベースが急速に整備されつつあります。こうした状況を踏まえ、今回の学術総会のテーマを「薬剤疫学と医療データベース〜次なるステージへ〜」をし、データベース研究に基づく今後の薬剤疫学の発展を見据えた講演やシンポジウムを企画いたしました。

 

提供 : 株式会社スズケン



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