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<スズケンDIアワー> 平成23年12月22日放送内容より スズケン

子宮頸がん・尖圭コンジローマ予防用 4価HPVワクチン


東京大学産婦人科講師
川名 敬

icon HPVとは

 HPVは、ヒトにだけ感染する最も小型なDNAウイルスである。ウイルス遺伝子はたった8つしかない。HPVは、100種類以上の“タイプ(遺伝子型とも言う)”に分けられる。粘膜に感染するHPVは、性的接触によって生殖器粘膜や外陰部皮膚に感染するいわゆる性行為感染をしてヒトにうつっていく。湯船や銭湯で感染することはない。
 粘膜型HPVは関連する疾患によって大きく2つに分けられる。子宮頸癌をはじめとするHPV関連癌から検出されるHPVをハイリスク(high-risk) HPVと、尖圭コンジローマなどの良性乳頭腫から検出されるHPVをローリスク(low-risk) HPVに分けられる。したがって、子宮頸癌と尖圭コンジローマは同じHPVによる疾患だが、実は原因となるHPVタイプは全く異なる。

ハイリスクHPVに関連する癌

 ハイリスクHPVが様々な粘膜に感染すると、それぞれの臓器の粘膜内に上皮内腫瘍intraepithelial lesion: IN(癌の前駆病変)を形成し、更にその一部が癌となる。
 HPVが関連した癌は、いくつもあるが、ほとんどはHPV16/18が原因になっている。多くの基礎的データ、疫学データからHPV16/18の発癌性がいかに高いかが窺える。しかし、子宮頸癌だけは、HPV16/18の寄与率は約70%であり、HPV16/18以外のハイリスクHPVでも癌化してしまうということがある。子宮頸部の免疫学的防御機構の弱さ、HPVに曝露される頻度が高いこと、HPVの増殖に向いている組織であることがその理由である。子宮頸がんを引き起こすハイリスクHPVは14-15タイプある。

icon 尖圭コンジローマとその母子感染症

 4価HPVワクチンは、子宮頸癌以外にも尖圭コンジローマを予防できる。これは大きなメリットである。その理由は3つある。@尖圭コンジローマ罹患者は子宮頸癌の数倍にも達し、女性の場合は10-20才代の若年者が主体である。A感染すると75%以上が発症し、一度罹患すると再発を繰り返し、心理的負担が大きい疾患であること。B尖圭コンジローマを合併している妊婦から出生する児に発症しうる若年性再発性呼吸器乳頭腫症(juvenile-onset recurrent respiratory papillomatosis: JORRP)がHPV6/11の母子感染症として問題となること。これらの点から尖圭コンジローマは、命に係わる疾患ではないものの(稀に悪性転化するが)、特に若年女性にとって脅威となる疾患である。
 JORRPは、気道粘膜にびまん性に形成される良性乳頭腫である。喉頭・咽頭・気管支・細気管支に至るまでのどの気道粘膜にも発生する。米国では年間2000〜2500例が発症する。嗄声が初発症状になることが多い。広汎な細気管支への進展がする場合もあり、時に気道閉塞を起こし致死的となる。尖圭コンジローマ合併妊婦からの母子感染症であることがわかっている。HPVワクチンによって生殖可能年齢になる前にHPV6/11感染を予防すれば、尖圭コンジローマはほとんど消失するはずであり、それに伴ってJORRPの発症もなくなると期待できる。

2つのHPVワクチン

 米国のMerck(MSD)社と欧州のGlaxo Smith Kline (GSK)社によって現在、世界各国で販売されている(表1)。いずれのワクチンも同じワクチン抗原を用いている。HPVウイルスの殻(キャプシド)を模倣した蛋白質L1であり、ウイルス様粒子virus-like particle: L1-VLPと呼ぶ。外観はウイルス粒子とほぼ同様の立体構造をしているが中身は空で感染性は全くない。現行のHPVワクチンはいずれも、複数のHPVタイプのL1-VLPをカクテルにしたカクテルワクチンである。サーバリックス○Rは、HPV16, 18型のL1-VLPをカクテルにした2価HPVワクチンである。ガーダシル○Rは、16, 18, 6,11型のL1-VLPをカクテルにした4価HPVワクチンである。
 2011年8月から2つのHPVワクチンが両方使用できるようになった。2価ワクチンはHPV16/18に起因する子宮頸部上皮内腫瘍と子宮頸癌だけである。4価ワクチンはHPV6/11/16/18に起因する子宮頸癌、外陰癌、腟癌、尖圭コンジローマと多くの適応がある。しかも世界的には4価HPVワクチンは男性に対して有効であり、67か国ではすでに承認・接種されている。

 

提供 : 株式会社スズケン



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