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<スズケンDIアワー> 平成23年12月22日放送内容より スズケン

子宮頸がん・尖圭コンジローマ予防用 4価HPVワクチン


東京大学産婦人科講師
川名 敬

icon HPVワクチン接種の実際

 HPVワクチンは、いずれも3回の筋肉注射である。HPVワクチンはどちらのワクチンも筋肉注射であることを十分に注意されたい。皮下注では免疫誘導能が劣る可能性がある。接種間隔は、サーバリックス○Rは0, 1, 6か月、ガーダシル○R0, 2, 6か月と添付文書に記載されているが、実際にはいずれのワクチンも1か月程度のずれは問題ないと報告されている。
 また他のワクチン製剤との接種間隔も注意が必要である。生ワクチンの接種を受けた者は、通常、27日以上、また他の不活化ワクチンの接種を受けた者は、通常、6日以上間隔を置いて接種するように添付文書に記載されている。ただし、医師が必要と認めた場合には、同時に接種することが可能である。
 HPVワクチンはしばしば接種対象が生殖可能年齢の女性となる。HPVワクチンは、いずれのワクチンも、妊娠が判明している女性には接種不可となっている。しかし、実際には大規模臨床試験の中で3回接種中に妊娠が判明した女性が多く存在し、報告では1500人ぐらいのガーダシル○Rを接種された妊娠経過、奇形率、流産率はプラセボや一般的な発生率と比較して上昇はなかった。

HPV16/18による子宮頸癌の疾患予防効果(2価と4価の比較)

 15-26才を対象にした大規模臨床試験では、ワクチンタイプ(16/18もしくは6/11/16/18)に未感染であれば、ワクチンタイプの感染とそれによるCIN2+の発症はほぼ100%予防される。一方、様々なバックグラウンドを持つ雑多な集団では、予防効果は約50%になってしまう。CIN2+を発症したのは、ほとんどがHPV16,18型の既感染者である。現行のHPVワクチンは既感染者には無効であることの傍証である。
 したがって、性交経験前の学童女子にHPVワクチンを接種することにより、HPV16/18型感染は明らかに予防できる。それによって、30才前後で発症するHPV16/18型による若年子宮頸癌を予防できる。この世代の日本人女性は、とくに子宮頸癌の癌検診率が低く、早期発見が難しい。その反面、悪性度が高いために浸潤癌になりやすく子宮温存が難しい。このような若年女性の生殖能力を断つことがないようにするには、HPV16/18型を予防できるHPVワクチンの意義は極めて大きい。
 現時点(5-7年の追跡期間)では、HPV16/18に対するHPVワクチンの予防効果は2価と4価で同等である。10-20年先まで有効性が持続するかどうかは不明であるが、海外ではHPVワクチン接種が3年以上先行しているので、持続期間の問題やブースターの必要性については海外からの報告を待ちたい。
 現行の2価もしくは4価HPVワクチンが予防できるのはHPV16型, 18型による子宮頸癌であって、それは日本における子宮頸癌の60-70%である。残りの約40%の子宮頸癌は現行のHPVワクチンでは予防できないと考えられる。基礎研究では、L1-VLPによって誘導された抗体は別のタイプのHPV感染を阻害できないことが証明されている。
 しかし、HPVワクチンの臨床試験におけるCIN2+の疾患予防では、交差性がありとしたデータが発表されている。EUや日本でもサーバリックス○Rの添付文書にHPV31, 33, 45型に対する交差予防効果があるという記載が追加されているが、適応疾患は16, 18型だけである。実際、交差性については、ハイリスクHPVの中でも緩徐に進行するタイプではCIN2+が徐々に発症するため、追跡期間とともプラセボ群との差がなくなってくる。まだ10年も経っていない現時点ではHPV16, 18型以外に対する交差性を強調するべきではないと考える。

4価HPVワクチンによるHPV6/11/16/18に起因する疾患予防効果

 4価HPVワクチンの16-26才を対象にした3つの大規模臨床試験(世界数十か国)を統合して解析したデータを表3に示す。“未感染者の集団”(per-protocol efficacy: PPE群)では、HPV6/11/16/18のいずれかに起因する各臓器の前癌病変(CIN2/3, AIS, VIN2/3, VaIN2/3)の発症をほぼ100%予防していることがわかる。この結果から、絶対的なHPV未感染者である学童女子にHPVワクチンを接種すれば、HPV6/11による尖圭コンジローマ、HPV16/18による子宮頸癌、外陰癌、腟癌はほぼ撲滅できると推察される。一方、既感染者、有病者などを含む一般集団(intention-to-treat: ITT群)では、ワクチン群にも評価疾患が発生しているため、予防効果としては子宮頸部疾患で約50%、外陰、腟疾患で70-80%と低下するが、それでも集団として考えると有意差を持って患者数が減少することが証明されている(表下段)。特に外陰、腟疾患、尖圭コンジローマではITT群としては高い予防効果が示され、成人女性に対する有効性が期待される。
 豪州では、国家プロジェクトとして2007年からHPV4価ワクチンの集団接種を12-13歳の学童女子に行い、更に13-26才の女性に2年間の無料接種キャンペーンを実施した。その間ビクトリア州では、学童児で80-90%、13-26才女性でも70%前後の接種率を得た。

4価HPVワクチンによる尖圭コンジローマ患者の減少

 その結果、豪州ではすでに尖圭コンジローマ患者が減少していることが報告されている。2007年のワクチンプログラム開始後、28歳以下のワクチン接種を受けていると思われる世代の女性の尖圭コンジローマ患者数だけが減少しはじめ、たった4年間で患者数が1/4になっている。2011年になって若年発症の子宮頸癌前癌病変の罹患者数も減少してきていることが報告された。

 

提供 : 株式会社スズケン



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