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<スズケンDIアワー> 平成24年1月5日放送内容より スズケン

MRSA感染治療用リポペプチド系抗菌薬 ダプトマイシン


聖路加国際病院内科感染症科部長
古川 恵一

 本日は、MRSA感染症に対する新しい治療薬、ダプトマイシンについてお話しいたします。

icon ダプトマイシンの特徴

 ダプトマイシンは、新しいリポペプチド系の静注抗菌薬で、MRSA感染による皮膚軟部組識感染や敗血症、右心系感染性心内膜炎などの治療薬として、最近、本邦で認可されました。
 ダプトマイシンの作用機序は、薬剤がグラム陽性菌の細胞膜に結合して、細胞膜からカリウムイオンを流出させて膜電位の脱分極を起こします。そして細菌の蛋白質やDNAやRNAの合成を阻害して殺菌するという機序です。
 ダプトマイシンはグラム陽性菌に抗菌力があり、MRSAを含む黄色ブドウ球菌、β溶血性連鎖球菌、α連鎖球菌、バンコマイシン耐性腸球菌を含む腸球菌などに対して比較的強い抗菌力を持っています。またグラム陽性桿菌や一部のグラム陽性嫌気性菌に対しても抗菌力があります。

In vitroにおけるダプトマイシンのグラム陽性菌に対する抗菌力

 各種グラム陽性球菌の90%の菌が発育阻止されるダプトマイシンの最小濃度すなわちMIC90の値を示します(表1)。MSSAもMRSAもMIC90の値は0.5μg/mLであり、感受性は良好です。なおダプトマイシンはグラム陰性菌に対しては抗菌力がありません。

ダプトマイシンの特徴と使い方

 ダプトマイシンの特徴と使い方について記しました(表2)。
 ダプトマイシンの抗菌力は濃度依存性であり、高濃度ほど抗菌力が強く殺菌作用が早くなります。またPost Antibiotic Effectをもち、抗菌薬濃度が細菌の最小発育阻止濃度MIC以下のレベルに下がっても細菌の発育を阻止する効果が約6時間まで持続します。
 マウスのMSSAやMRSAによる腹膜炎における治療実験では、抗ブドウ球菌ペニシリンやバンコマイシンやリネゾリドよりもダプトマイシンの方がより早く治療効果を示したと報告されています。
 ダプトマイシンは蛋白結合率が約91%で高く、血中濃度半減期が約8.5時間で長く、腎排泄性であります。腎機能がクレアチニンクリアランス30mL/min以上であれば、1日1回24時間毎に投与します。またダプトマイシンは血管内カテーテルや人工弁や人工関節など人工充填物の感染で問題になるバイオフィルムに透過性があるといわれています。
 ダプトマイシンが適応となる感染症としては、第1にMRSAによる皮膚軟部組織感染があります。投与量は体重1kg当たり4mgを1日1回30分で点滴静注します。
 ダプトマイシンはMRSAのみならずMSSA、β溶連菌、腸球菌などの感染に対しても有効です。蜂窩織炎や膿瘍や創部感染や糖尿病性足潰瘍感染などに適応となります。

 

提供 : 株式会社スズケン



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