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<スズケンDIアワー> 平成24年1月5日放送内容より スズケン

MRSA感染治療用リポペプチド系抗菌薬 ダプトマイシン


聖路加国際病院内科感染症科部長
古川 恵一

ダプトマイシンの皮膚軟部組織感染に対する有効率―従来の標準的治療法との比較

 皮膚軟部組織感染に対して、従来の標準的な治療であるバンコマイシンや抗ブドウ球菌ペニシリンによる治療法とダプトマイシンの場合とで比較した治療成績がありますが、ダプトマイシンは従来の標準的方法に劣らずに高い有効率を示しました(表3)。またダプトマイシンの方がバンコマイシンよりも短い投与期間で治療効果を認めたという報告があります。
 なお糖尿病性足潰瘍の感染はしばしばグラム陰性桿菌や嫌気性菌などの混合感染があり、骨髄炎を合併する場合もあります。ダプトマイシンはグラム陰性桿菌やグラム陰性嫌気性菌には無効ですので、これらの菌の混合感染がある場合は他の抗菌薬との併用が必要です。また骨髄炎がある場合は4mg/kgよりも多い投与量が必要と考えられます。糖尿病性足潰瘍感染のダプトマイシンの治癒率が66%でやや低くなっていますが、それはこのような理由によると考えられます。

黄色ブドウ球菌感染による皮膚軟部組織感染に対するダプトマイシン有効率

 皮膚軟部組織感染症の起因菌がMSSA,MRSAのいずれの場合でもダプトマイシンは80%台以上の高い有効率を示しています(表4)。
 次にダプトマイシンの第2の適応症として、MRSAによる右心系の感染性心内膜炎および敗血症があります。この場合の投与量は1日1回6mg/kgです。

MRSA,MSSAによる感染性心内膜炎と菌血症の治療終了後42日目の治療成功率(%)

 Fowlerらは、124人のMSSAまたはMRSAの菌血症または感染性心内膜炎について、ダプトマイシン1日あたり6mg/kgで治療を受けた群と、従来の標準的治療であるバンコマイシンまたは抗ブドウ球菌ペニシリンで治療を受けた群とで治療終了後42日目の治療成功率を比較しました(表5)。全体での治療成功率はダプトマイシン群が44.2%であるのに対して従来の標準的治療群では41.7%であり、右心系心内膜炎および菌血症についてはダプトマイシン群の治療成績は、従来の標準的治療群の治療成績に比べて劣っていないという結果でありました。 左心系心内膜炎については症例数が少なく、今後の検討を必要とします。
 またダプトマイシン治療群120例の中で細菌学的に無効であった19例があり、そのうち6例にダプトマイシンの感受性の低下が認められました。ダプトマイシン治療中に一部の例では黄色ブドウ球菌の薬剤感受性の低下、耐性獲得が起こりうる可能性が示唆されます。
 また感染性心内膜炎におけるダプトマイシンの治療効果についてのLevineらの報告を、では、ダプトマイシンによる左心系心内膜炎38例の治療成功率は65.8%であり、右心系心内膜炎11例の治療成功率は54.5%でした。またMRSAによる場合は、左心系心内膜炎13例の治療成功率は60%であり、右心系心内膜炎8例の治療成功率は63%でした。治療成功例のダプトマイシンの投与期間の中央値は27日間でした。症例数が少なく、今後更なる検討を必要とします。

 

提供 : 株式会社スズケン



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