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<スズケンDIアワー> 平成24年1月5日放送内容より スズケン

MRSA感染治療用リポペプチド系抗菌薬 ダプトマイシン


聖路加国際病院内科感染症科部長
古川 恵一

icon 骨髄炎における治療効果

 次に適応症にはまだ含まれていませんが、骨髄炎におけるダプトマイシンの治療効果の報告についてお話しします。
 Langらの報告では、67例の骨髄炎に対してダプトマイシンを、中央値1日5.6㎎/kgの投与量を中央値35日間投与して、治療終了後平均76日後に評価しました。起因菌はMRSAが45%でした。48%はダプトマイシンと他の抗菌薬を併用しました。
 治療成績は、治癒が42例(63%)で改善が13例(19%)で、合わせて82%で有効という結果でありました。治療失敗は7例(10%)、評価不能は5例(7%)でした。また人工充填物感染例の82%と菌血症合併例の88%において有効でした。またダプトマイシン単独使用例の94%が有効でした。

ダプトマイシンの投与量と骨髄炎の治療成功率

 ダプトマイシンの1日の投与量が4mg/kgを上回る群の方が4㎎/kg以下の群よりも骨髄炎の治癒率は88%対65%で有意に高いという結果でありました(図1)。今後、骨髄炎におけるダプトマイシンの適応や最適の投与量について更なる検討が必要であると考えます。
 なおダプトマイシンは肺のサーファクタントにより不活化されますので、肺炎などの呼吸器感染には適応になりません。髄膜炎に対しはダプトマイシンは髄液移行性が不良ですので、今後の検討が必要です。

icon ダブトマイシン投与の留意点

 ダプトマイシンを投与する際は生理食塩水に溶解します。溶解液はブドウ糖を含まないことが必要です。そして30分かけて点滴静注します。
 投与量は腎機能がクレアチニンクリアランス30mL/min以上であれば、皮膚軟部組織感染の場合は1日1回4㎎/kgを投与し、敗血症や右心系心内膜炎や重症感染の場合は1日1回6mg/kgを24時間毎に投与します。米国では重症感染では1回量を8mg-10mg/kgまで増量する場合があります。また腎機能低下がある場合は、クレアチニンクリアランス30mL/min以下であれば1回4㎎/kgまたは6㎎/kgを48時間毎に投与します。血液透析患者は、透析で除去されますので、週3回透析後に1回4㎎/kgまたは6㎎/kgを投与します。
 ダプトマイシンの副作用は、アレルギー反応による発疹、肝障害、吐き気、下痢などの消化器症状、またCPKの上昇が1日4㎎/kgの投与量では約2%、1日6mg/kgの投与量では約6%に見られることがあります。まれに筋肉痛を伴い、筋肉障害が見られることがあり、特に高コレステロールの治療薬スタチンを投与されている患者では注意が必要です。ダプトマイシン投与中は週1回CPK値などを測定することが奨められています。
 まれに末梢神経障害や薬剤性肺臓炎などの副作用が報告されています。

icon おわりに

  最後に、ダプトマイシンが適応となる状況をまとめますと、MRSAの単独または混合感染による皮膚軟部組織感染やMRSAの敗血症、右心系心内膜炎の場合であります。特にバンコマイシンやテイコプラニンやリネゾリドが無効であるか、副作用で使えない場合に良い適応になります。またβラクタム剤にアレルギーがある場合に黄色ブドウ球菌感染などグラム陽性菌感染の治療のために、選択すべき薬の一つになります。また1日1回30分の点滴静注投与で治療できますので、MRSA感染などを通院により外来でまたは在宅で治療する場合に良い適応になる抗菌薬であると考えます。
 今後は、主にMRSAによる左心系感染性心内膜炎や骨髄炎、その他の感染症の治療においてダプトマイシンの適応や投与量についてさらに検討していく必要があると考えます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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