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<スズケンDIアワー> 平成24年1月12日放送内容より スズケン

MRSA感染治療用リポペプチド系抗菌薬 ダプトマイシン


兵庫医科大学乳腺・内分泌外科教授
三好 康雄

icon ホルモン療法に対する耐性のメカニズム

フェソロデックスの作用

 今回お話しするフルベストラントは、タモキシフェンと同じようにエストロゲン受容体に結合するタイプの、新しいお薬で、SERDとも呼ばれます。今までのタモキシフェンと違い、エストロゲン受容体の働きを邪魔するだけではなく、受容体そのものを分解してしまうため、より高い効果が期待されるお薬です。
 タモキシフェンは閉経前、閉経後両方の女性に用いられますが、フルベストラントは、ホルモン受容体陽性の閉経後の女性で、しかも再発した後に用いられるお薬です。
 再発した閉経後の女性では、最初に用いられるホルモン剤として、通常アロマターゼ阻害薬が使われています。閉経前の女性では、卵巣からエストロゲンが産生されます。閉経に伴い血液中のエストロゲンは減少しますが、副腎からアンドロゲンという男性ホルモンが分泌しています。このアンドロゲンが、体の脂肪細胞や、乳癌細胞でアロマターゼという酵素の働きによって、エストロゲンに変換されます。アロマターゼ阻害薬は、アロマターゼの働きを抑えることで、エストロゲンの合成を抑える働きをします。アナストロゾール、レトロゾール、エグゼメスタンという3種類のお薬が市販されていますが、どれもほぼ同等の効果を持っています。

フェソロデックスの作用

 一旦アロマターゼ阻害薬が効いて、がんの進行が止まったり、がんが小さくなった場合でも、やがて耐性が出てくるために、がんは再び大きくなります。これが再発患者さんの治療において、最も頭を悩ませる点です。アロマターゼ阻害薬はエストロゲンを低下させますので、燃料であるエストロゲンがない状態では、エンジンに相当する受容体が働かないため、がんの増殖は止まります。しかし、がん細胞はこのような状態でも生き延びようとして、エストロゲンとは別の増殖因子の刺激によってエストロゲン受容体を刺激し、勝手に受容体を働かせることが明らかにされています。これがホルモン療法に対する、耐性のメカニズムです。こうなると、がんは再び増殖するようになり、今まで使っていたお薬はまったく効かなくなります。
 この時は、別のホルモン剤を用います。そうすると、多くの場合、別のホルモン剤が効きます。そして、いくつかのホルモン剤を使って、効果がなくなった場合には、抗がん剤を用いることになります。一般的にホルモン剤の効果が表れるまでには、少し時間がかかります。そのため、症状のある方や、がんの進行が速い場合にはホルモン剤ではなく、抗がん剤の治療を行うこともあります。

icon フルベストラントの臨床試験成績

 アロマターゼ阻害薬のあと、次にどのホルモン剤を使うと最も効果が高いか、この点は明らかではありません。しかし、アロマターゼ阻害薬に耐性となっても、エストロゲン受容体は働いています。従って、エストロゲン受容体そのものの働きを阻害し、受容体を分解する作用のあるフルベストラントは、アロマターゼ阻害薬に耐性となったがんでも、効果を発揮するものと期待されます。さらに、受容体を減少させる作用を持っていますから、効果もより長く続くことが予想されます。
 海外における臨床試験の結果によると、362人中、165人、46%で癌が縮小するか、あるいは24週間以上、癌の増殖を止めることができました。このように、フェソロデックスを使った患者さんの、約半数に効果が認められています。さらに、効果が認められた患者さんでは、癌の増殖を止められた期間の中央値は、16.6ヶ月でした。これは、フェソロデックスの効果があった患者さんのうち、半数以上で1年を超える治療効果が得られたことを示しています。
 このようにフルベストラントは、他のホルモン剤に対して耐性となった患者さんにも、長期間効果が期待されるお薬です。

 

提供 : 株式会社スズケン



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