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<スズケンDIアワー> 平成24年1月26日放送内容より スズケン

DI実例集(173)PK-PD理論に基づいた抗菌薬適正使用


鹿児島大学病院薬剤部医薬品情報主任
松元 一明

icon はじめに

 近年、抗菌薬の添付文書における用法・用量が大幅に改定されております。例えば、キノロン系抗菌薬のレボフロキサシンは添付文書上、1回100mgの1日3回投与が承認された用法・用量でした。しかし、2009年4月に1日1回500mg投与へ変更になりました。同様に、アミノグリコシド系抗菌薬のアルベカシンは1回100mgの1日2回投与が承認されておりましたが、2008年2月に1日1回200mg投与に改訂されました。また、添付文書の用法・用量と各種ガイドラインに記載されている用法・用量が異なるものもあります。日本呼吸器学会が作成した院内肺炎ガイドライン2008のアミノグリコシド系抗菌薬の用法・用量として、アミカシンは添付文書では1回200mgの1日2回投与ですが、ガイドラインでは1日1回15mg/kgとなっております。また、ゲンタマイシンは添付文書では1回40mgの1日3回投与ですが、ガイドラインでは1日1回5mg/kgとなっております。なぜ、今になってこのように用法・用量が変わるのでしょうか、その理由といたしましては、現在、PK-PD理論に基づいた抗菌薬の適正使用が推奨されているからです。

icon PK-PD理論とは

 それでは、PK-PD理論とは何なのか、説明いたします。まず、PKとはpharmacokinetics(薬物動態)のことで、PDとはpharmacodynamics(薬力学)のことです。PK-PD理論とは薬剤の効果をPK(いわゆる薬物の血中濃度)、および、PD(いわゆる抗菌活性)の関係から検討し、得られた理論になります。その研究結果から、抗菌薬毎に、効果と相関するPK-PDパラメータは異なることが明らかとなり、各種抗菌薬の効果を最大限に発揮させるための投与量、投与間隔が解明されました。PK-PD理論において使用するPKのパラメータはCmax、最高血中濃度とAUC、血中濃度時間曲線下面積です。またPDのパラメータはMIC、菌の最小発育阻止濃度です。そして、PK-PDパラメータはこれらのパラメータを組み合わせて3つに分けられます。

PK/PDパラメーターの種類

 最高血中濃度が高ければ高いほど効果を示す濃度依存型のCmax/MIC、菌の最小発育阻止濃度であるMIC以上の濃度で菌と接触する時間が長ければ長いほど効果を示す時間依存型のTime above MIC、最後に、体内に入った薬物の量が多ければ多いほど効果を示すAUC/MICがあります。それでは、濃度依存型のCmax/MIC、ならびに、時間依存型のTime above MICに分類される抗菌薬はどのような投与方法が推奨されるのでしょうか。

メロペネム血中濃度シミュレーションとTime above MIC

 血中濃度シミュレーションソフトウェア、メロタムを用いて、正常腎機能のクレアチニンクリアランス100mL/minuteの成人で、1日量を2gとして、1回投与と4分割投与の場合の血中濃度シミュレーションを行いました。その結果、MICが1μg/mLの場合、MIC以上の濃度が得られるTime above MICは、1回投与では1日24時間のうち26.3%の時間しかMIC以上の濃度を保つことができませんでしたが、4分割投与にすることで最低血中濃度、いわゆるトラフ濃度が上昇し、72.3%の時間、MIC以上の時間を保つことができました。したがいまして、時間依存的に効果を示す薬剤は1日3回もしくは4回投与、つまり、分割投与が推奨されます。一方、濃度依存的に効果を示す薬剤は、1日量が同じであれば、1日1回投与の方が、分割投与に比べ、最高血中濃度が高くなるので、1日1回投与が推奨されます。

PK/PD解析実施に伴う治療成績の変化

 実際に、イタリアのミラノ大学で行われた臨床研究において、PK-PD理論に従って抗菌薬が投与された群では、PK-PDに従わず投与された群と比較して、入院期間は16日から11日へ、無効症例数は31.9%から17.5%へ、死亡症例数は10.1%から4.9%へ減少し、PK-PD理論に基づいて抗菌薬を投与することの有用性が示されております。

 

提供 : 株式会社スズケン



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