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<スズケンDIアワー> 平成24年3月1日放送内容より スズケン

多発性硬化症治療薬 フィンゴリモド塩酸塩


北海道医療センター臨床研究部長
新野 正明

icon フィンゴリモド投与時に特に注意すべき事項

 フィンゴリモド投与時に特に注意すべき事項として、「初回投与時の徐脈性不整脈」、「感染症」、「黄斑浮腫」、「肝機能異常」、「妊娠、胎児に対するリスク」の5項目が挙げられています。
   「初回投与時の徐脈性不整脈」は、フィンゴリモドの投与開始時に、一過性の心拍数低下や房室伝導の遅延が生じることが報告されています。徐脈性不整脈に関連した徴候または症状を確認するため、初回投与後少なくとも6時間,できれば1日は、医療機関できちんと脈拍数、血圧などのバイタルサインの観察を行う必要があります。
 感染症の発現率は、臨床試験を通じてプラセボ群と比べ差が認められていません。また、本剤投与中でも、インフルエンザワクチンの接種により、抗体は正常に産生されることが知られています。ただ、フィンゴリモド投与により末梢血のリンパ球数は確実に減少しますので、フィンゴリモド投与中は、白血球数などの血液検査を定期的に行い、感染症に対して常に注意を払うことが必要です。
 「黄斑浮腫」は、そのほとんどが無症候性ですが、定期的な眼科での検査が必要です。糖尿病を合併している場合は特にしっかりと眼科医と連携して投与することが重要です。
 「肝機能異常」については、肝機能検査を定期的に実施し、肝機能障害を疑うような臨床症状が現れた場合には投与を一度中断し、適切に対応することが必要です。 女性に対しては、「妊娠、胎児に対するリスク」も重要なポイントです。フィンゴリモドの投与開始前には患者さんが妊娠していないかどうかを確認し、投与期間中は避妊を徹底する必要があります。

国内第Ⅱ相継続投与試験

 ところで、フィンゴリモド投与においては、NMOと言われる視神経脊髄炎や抗AQP-4抗体陽性の患者においては注意が必要です。わが国では視神経脊髄炎の頻度が高いことはよく知られています。フィンゴリモドの国内臨床試験でも視神経脊髄炎を除外するために脊髄長大病変を有する症例は除外基準ではあったものの、実際には抗AQP-4抗体陽性例が4名含まれていました。そのうちの2例は重度の再発を引き起こし、他の症例も再発を繰り返しました。フィンゴリモドは抗AQP-4抗体陽性例や脊髄長大病変を有する症例に対する有効性および安全性が確認されていません。そのため、この薬剤を導入する際、視神経脊髄炎や抗AQP-4抗体陽性疾患の鑑別を十分行う必要があります。

 わが国の多発性硬化症治療は、IFNβ-1a以来5年ぶりの新薬登場により、治療選択肢の幅が広がりました。今後は、フィンゴリモドを多発性硬化症診療の現場でどのように使っていくかが重要であり、適正使用の原則のもと、対象患者をきちんと選択して使用していくことが大切と思われます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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