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<スズケンDIアワー> 平成24年5月3日放送内容より スズケン

キャンディン系抗真菌薬 カスポファンギン酢酸塩


昭和大学臨床感染症学教授
二木 芳人

icon キャンディン系抗真菌薬の特徴

 キャンディン系抗真菌薬は、我が国ではミカファンギンが2002年12月に発売され、既に10年の歴史のある抗真菌薬ですが、そのグループとしての特徴は、まず、第一にその作用機序が真菌の主要細胞壁構成成分である(1-3)β-Dグルカンの合成阻害であり、従来の抗真菌薬とは作用機序が異なることです。従って、他の抗真菌薬に耐性の真菌にも有効であること、そしてヒトの細胞にはない細胞壁を傷害するので、既存薬に比べ安全性に優れる点にあります。キャンディン系抗真菌薬は静注で用いられ、その抗真菌作用は濃度依存的に高められると考えられており、半減期も長いので1日1回の投与で使用します。また、カンジダ属真菌には殺真菌的に、また、アスペルギルス属真菌には静真菌的に作用するとされますが、最近、生体内ではアスペルギルス属真菌にもマクロファージなどの貪食細胞と協力作用がみられ、殺真菌的に作用するとの研究結果も報告されています。
 他方、その抗真菌活性のスペクトルは比較的狭く、有効真菌種はカンジダ及びアスペルギルス属真菌に限られ、クリプコックスやムーコル属真菌などには無効であります。しかし、カンジダとアスペルギルス属真菌は深在性真菌症の大多数を占める重要な病原真菌であり、これに有効で、なおかつ安全性に優れる抗真菌薬としてキャンディン系薬は最も信頼される抗真菌薬の一つとして高く評価され、広く使われてきました。

キャンディン系抗真菌薬の分子構造の違いと薬剤特性

 我が国ではこの10年間、ミカファンギンが唯一のキャンディン系抗真菌薬でしたが、諸外国ではミカファンギン以外にも今回我が国で発売となったカスポファンジンともう一つアニデュラファンジンの計3誘導体が臨床使用されています。これらは同じキャンディン系抗真菌薬ですが、無論それぞれに異なる有効性面、安全性面、さらには価格などに差があり、諸外国ではそれに応じた使い分けも行われています。体内動態や各種真菌属に対する抗真菌活性にも差がみられます。

icon キャンディン系抗菌薬の薬物動態

キャンディン系抗真菌薬の薬物動態パラメータの比較

 体内動態を比べてみると、同じ投与量で静脈内投与した場合の血中濃度はカスポファンジンが最も高くなります。血中濃度半減期はいずれも長いですが、アニデュラファンジンが24時間以上と最長です。尿中排泄はカスポファンジンがやや高いですが、アニデュラファンジンなどは殆ど尿中には排泄されません。抗真菌活性は、MICやMECの試験管内活性で見た場合、いずれもかなり低い数字、すなわち強い抗真菌活性を示しますが、ミカファンギンやアニデュラファンジンがやや優れる傾向が見られます。しかし、実際に動物や人に投与する場合、すなわち生体内での薬物活性を考えてみますと、キャンディン系抗菌薬には注意すべき大事な特性があります。それは高い蛋白結合率を有していることです。アニデュラファンジンやミカファンジンでは結合率は99%以上であり、これによって生体内の抗真菌活性は数倍あるいは高いものでは100倍以上低下すると考えておかなければなりません。

動物実験モデルにおける効果

 カスポファンジンも同様に96%程度の高い蛋白結合率を示し、血清の添加で試験管内でのMICやMECは2倍から8倍程度低下しますが、その変化率が他のキャンディン系に比べて小さいことが知られています。動物実験成績でもこの点は確認されており、カンジダの動物感染モデルで、MICではより良好な活性を示すミカファンギンよりも、カスポファンジンは同じ投与量ではより優れた治療効果を示す事が明らかにされています。

 

提供 : 株式会社スズケン



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