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<スズケンDIアワー> 平成24年5月10日放送内容より スズケン

ニューモシスチス肺炎治療薬 アトバコン


東京医科大学臨床検査医学教授
福武 勝幸

icon ニューモシスチス肺炎の治療

ニューモシスチス肺炎の治療

 パルスオキシメータによる動脈血酸素飽和度SpO2 が90-95%程度に低下する例が多く見られます。動脈血酸素分圧[PaO2]が70torr 未満または[A-a DO2]が35torr 以上の中等症以上の重症度を示す症例には可及的速やかに副腎皮質ステロイドホルモンの投与を行いガス交換の改善を図ることが重要です。ニューモシスチス肺炎の治療は、ST 合剤が第一選択薬となりますが、HIV感染者ではST合剤による副作用の発生頻度が高く、開始後数日から10 日程で発疹、発熱、肝障害などによりST合剤の継続が困難となるケースが少なくありません。その場合は代替薬としてペンタミジンやアトバコン等を使用しますが、ペンタミジンも重篤な副作用の多い薬剤であり、使える期間が限られることが多いとされています。

アトバコンによる有害事象

 アトバコンの有害事象は錠剤を投与した249 例の成績では、悪心、発疹、下痢、頭痛、嘔吐、発熱などでした。重大な副作用としては皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)、多形紅斑、重度の肝機能障害などの可能性がありますが、アトバコンは他の薬剤に比べて副作用は少なく認容性は優れています。

icon アトバコンの使用について

 今回発売されたアトバコン(商品名:サムチレール内用懸濁液)は果実ようの芳香がある鮮黄色の懸濁液で、5mL 中にアトバコン750mg を含有する分包品です。適応症はニューモシスチス肺炎、ニューモシスチス肺炎の発症抑制となっており、HIV感染の有無に関わらず使うことが出来ますが、「副作用によりST 合剤の使用が困難な場合に使用すること」と規定されています。アトバコンによるニューモシスチス肺炎の具体的な治療法は、前薬のST合剤を終了後ただちに開始し、通常、成人には1 回5 mL(1パック)を1 日2 回食後に経口投与します。ニューモシスチス肺炎の発症抑制の場合も同様ですが、添付文書では1 回(2パック)10mLを1 日1 回、食後に経口投与することになっています。ただし、2パックを続けて服用するのは大変なので患者さんの希望によって治療時と同様に2回に分けても問題はないと考えています。サムチレール内用懸濁液は絶食下では吸収量が低下するため、食後すぐに服用することが重要です。また、投与開始時及び投与中に下痢が認められている場合には本剤の血漿中濃度が有意に低下し、治療効果が減弱する可能性があります。従って、本剤を食後に投与できない患者や、下痢が認められている患者ではペンタミジンなどの代替治療を検討する必要があります。

 最後になりましたが、サムチレール内用懸濁液の発売をもって、厚生労働省エイズ治療薬研究班からのアトバコンの供給は終了させていただきます。各医療機関におかれましては、円滑な切り替えが行えますよう皆様のご協力をお願いいたします。

 

提供 : 株式会社スズケン



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