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<スズケンDIアワー> 平成24年7月12日放送内容より スズケン

非小細胞肺癌治療分子標的薬 クリゾチニブ


近畿大学内科学腫瘍内科部門教授
中川 和彦

icon クリゾチニブの副作用について

 次に、副作用について説明をしたいと思います。

副作用の説明

 分子標的薬は、一般的に副作用が少ないと思われがちですが、全く副作用がないというわけではありませんので注意する必要があります。クリゾチニブにいても、注意すべき副作用が幾つかございます。その中で、最も重要な副作用は、間質性肺炎です。EGFRのチロシンキナーゼ阻害剤;ゲフィニチブが発売されたときに、いろんな患者に対してゲフィニチブが投与されて間質性肺炎が起こり、それが社会問題になって、今も裁判が起こされていることは、皆さんもご存じかと思います。したがって、私たちは過去の事例を学習して、クリゾチニブによる治療においては、きちんとしたインフォームドコンセントを取った上で十分な経過観察をを実施していくことが必要です。
 間質性肺炎は、欧米では1.6%に起こると言われていますが、まだ日本における使用経験が少ないこともあり、日本での発症頻度は定かではありませんので注意して用いなければなりません。間質性肺炎の主な症状は、発熱、せき、呼吸困難といった症状です。クリゾチニブを使われる場合には、十分注意して観察する必要があります。1週間以内に発症して亡くなられた症例も経験しておりますので、十分に気をつけていただきたいと思います。
 2番目は、重症な肝機能障害が起こることであります。GOT、GPTが上がるということであればともかく、ビリルビン上昇を伴うような重症肝機能障害を起こして亡くなられる症例もあったと報告されています。十分な注意が必要です。
 そのほか、たまにではありますが、発熱性好中球減少を伴うような骨髄抑制も見られます。頻度は低いのですが、そのほか、重症な皮膚障害を呈してくることもあります。これらが1人の患者で一緒に起こってくることもありますので、十分な経過観察が必要と思われます。
 よく起きる副作用としては、残像を呈する視力障害が特徴的です。日常生活上は車の運転ですとかに気をつける必要があります。しかしながら、この視力障害が器質的な変化を起こすことはないと言われていますし、だんだん慣れてきますし、視力障害で投薬を中断せざるを得なくなることはないようです。
 もう一つ重要な、高頻度に認められる副作用は、吐き気です。1日2回で毎日服用しますので、吐き気が強くて内服が続けられないということが起こり得ますし、また減量を余儀なくされることがありますので、いろんな支持療法を適確に行う必要があります。

icon クリゾチニブの投与にあたって

 私たちはこのクリゾチニブが発売されたことを非常に喜んでいます。なぜならば日本人研究者により最初に発見された標的分子に対する治療薬であることも大変重要なポイントではありますが、ゲフィニチブ(イレッサ)に続く肺癌治療の個別化を促進する重要な出来事と認識しているからです。私たちはゲフィチニブからいろんな大切な教訓を得ました。患者選択としてEML4―ALK陽性の患者さんに対してのみ治療するように心がけましょう。文書での説明と同意を得て、そして副作用をきちんと説明することが重要であります。

分子標的治療の進歩

 先ほど申しましたように、まだ日本における臨床経験は少ないということもあります。副作用に関しても、有効性に関しても、まだきちっとしたデータがないということを、患者さんにもしっかりと説明した上で、同意書をとって治療をすることをお勧めいたします。
 ゲフィニチブ発売の最初のときに、不適切な患者に安易に投薬されたことによって、間質性肺炎で多くの人が亡くなられたという不幸な出来事がございましたが、くれぐれもそのようなことには決してないように、私たちは心がけなければならないと思います。
 新しい道具をまたもう一つ手に入れることができました。皆さんと一緒にこのお薬を大切に使っていきたいと思います。またこのクリゾチニブは、EML4-ALKだけではなく、ROS1のリアレンジメントを有する患者さんにも有効であることが、ことしのASCOで報告されています。この点もまた精力的に研鑚を積んでいきたいと思います。

 

提供 : 株式会社スズケン



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