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<スズケンDIアワー> 平成24年8月16日放送内容より スズケン

成人T細胞白血病リンパ腫治療薬 モガムリズマブ


愛知医科大学腫瘍免疫講座教授
上田 龍三

 本日は成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)、治療が最も困難な白血病リンパ腫に新しい治療薬が生まれたというお話をさせて頂きます。
 ATLを抗体で治療するお薬、モガムリズマブ(商品名:ポテリジオ)ですが、この新薬は開発研究から治療研究まで一貫して日本で行われ、今年(2012年)5月に世界で初めて患者さんに届けられました。その開発の経緯、治療効果、このお薬の今後の期待などをご紹介したいと思います。

icon ATLの病像

 先ず、この薬の対象疾患である成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)の説明から始めたいと思います。

成人T細胞白血病リンパ腫 (ATL)の臨床特徴

 ATLは、ウイルスによる感染性の疾患であり患者は、日本以外にはアフリカ、中南米、アジアの一部地域など、限られた地域にみられる血液のがんです。この病気の特徴は、患者の血液がん細胞の核は花びらのよう形をしており、血液だけでなくリンパ腺や、肺、胃などにもしばしばがん細胞は浸潤します。免疫能力が低下しており、すぐ重症な感染症などに罹り、亡くなられる場合が多いという点です。
 患者は九州沖縄四国など日本の西南部に多く、50歳以上の高齢になって発症することや、親族内に同じ病気を発症される報告もあります。ひとたび、病気を発症すると急激に悪化し、従来の化学療法などが効きにくく、半分以上の患者さんは発症後1年以内に亡くなられる血液のがんとして、1977年に高月清博士らによって疾患概念が提唱された病気です。

HTLV-1感染者(キャリア)

 病気の原因ウイルスHTLV1が1980年初期に発見され、感染力自体は弱いのですが、ウイルス感染した白血球により、人から人に感染することが明らかになりました。日常生活では、母乳による母から乳児への垂直感染が最も多く、また夫婦関係による夫から妻への水平感染も明らかになりました。手術などでの輸血からの感染は血液センターでウイルス検査が施行されるようになった現在では問題はほとんどなくなりました。
 HTLV1ウイルスに感染している人をキャリアと呼びますが、最近の疫学調査では全国で108万人と推定され、20年前の120万人より多少減少しました。詳細な調査によりますと九州・沖縄地方では減少していますが、一方、全国に拡散し、特に関東などの大都市で増加している点が社会問題となっております。全世界では数千万人のキャリアの方がいると想定されております。キャリアの方が生涯にATLを発症する確率は約5%と推定され、日本では毎年約1150名のATL患者が発症しており、約1000名のATL患者が亡くなっているのが現状です。
 そこで、2010年、菅直人首相(当時)の時に国策として「HTLV1特命チーム」が結成され、政府、行政、アカデミア、市民がATL/HTLV1の克服に向けて一丸となって取り組むことを決定し、その一環として、母子感染対策として妊婦健診にHTLV1抗体検査をすることとなり、予防対策が一歩前進しました。

 

提供 : 株式会社スズケン



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