→ 番組表はこちら
→ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成24年8月16日放送内容より スズケン

成人T細胞白血病リンパ腫治療薬 モガムリズマブ


愛知医科大学腫瘍免疫講座教授
上田 龍三

icon 新しい抗体薬の開発

 次いで、これまでの抗がん剤も効かないATL細胞に新しい抗体薬が開発されたかをお話しします。
 我々は2000年ごろにリンパ腫に良く反応する抗体を探していました。と申しますのは、リンパ腫は大きくB細胞由来とT細胞由来のリンパ腫に分けられます。当時すでにB細胞には画期的によく効くリツキサンという抗体が開発され、それまでの化学療法に、この抗体を加えることにより治療効果が格段と良くなることが分かり、治療法が一新してしまいました。しかしT細胞リンパ腫は病状も分類も複雑で、まだ診断や治療に使える有効な抗体はありませんでした。そのような時に、旧協和発酵研究所から「ケモカインレセプターに対する抗体の作製に成功したので、人の疾患に利用できないか」との共同研究の申し入れがありました。ケモカインとかケモカインレセプターはもともとT細胞の増殖や機能に大きく関与していることが分かっていましたから、このケモカインレセプターに対する抗体といろいろなT細胞リンパ腫の細胞での発現を調べてみますと、多くのT細胞リンパ腫細胞にいろいろな頻度で発現しておりました。
 特に、約9割のATL患者さんのがん細胞は陽性で、しかも陽性の患者さんは陰性の患者さんよりも病状が悪いということもわかりました。それで、この抗体は少なくもATLの病状診断に使える抗体である直感したものでした。
 抗体を作製した研究所では、2003年に抗体のフコースの量を少なくすると従来の抗体に比べ抗体が細胞を殺す機能を100倍から1000倍も強くする新しい技術の開発に成功しました。この技術を応用したキメラ抗体の作製に成功しましたので、さっそく、ATL患者のがん細胞と、免疫能力の落ちている本人のNK細胞をこの抗体と混ぜて試験管の中で反応させると、従来の作製法による抗体では全く効果がでなかったのですが、この新技術で作製した抗体では見事に患者自身のリンパ球が、本人のがん細胞を死滅さすことに初めて成功いたしました。この時の感動は今でも脳裏に焼き付いております。

icon 臨床試験について

 多くの治療に用いるための安全性や安定性の実験を行った後、遂に世界で初めての新規の技術で作製したヒト型の抗CCR4抗体による治療を2006年7月、CCR4陽性の末梢性T細胞リンパ腫患者を対象として、モガムリズマブ第Ⅰ相試験を本邦で開始いたしました。2008年8月に全症例登録が終了し、0.01~1mg/kgの投与量範囲内では安全に使用できることが分かったため、第Ⅱ相試験では投与量は1.0mg/kgとすることに決定しました。

第2相治験 - 有効性の評価* (n=26**)

 続いて2009年6月より本邦で第Ⅱ相臨床試験を開始したところ、わずか9か月という、これまでの日本の治療研究では考えられなかった速さで患者の登録を完了することができました。いかにこの新薬が医療関係者だけでなく、患者、ご家族からも期待されていたかを物語るものでした。現在の化学療法が無効であったATL患者26例のうち、驚くことに、この抗体療法だけで、完全寛解が8例、部分寛解が5例に認められ、奏効率は26症例中13例即ち、50.0%の患者に有効でした。

抗体薬ポテリジオの注意すべき副作用

 この新薬による副作用としては抗体というたんぱく質を患者に注入することによる生体反応(infusion reaction)がほぼ全例に認められ、また60%の患者に皮膚に皮疹やアレルギー反応のような皮膚症状がでました。その他感染症、B型肝炎、腫瘍崩壊症候群、白血球の減少等が観察されましたが、いずれも重篤な副作用はなく、対症療法で抑えることができる程度のものでした。しかし、今後も十分注意してお使いいただきたいと思います。
 このように、第Ⅰ相、第Ⅱ相臨床試験で有効性と安全性が確認された事から、2011年4月に抗体の製造販売の申請が成され、その後の審査を経て2012年3月に承認をえて、5月29日に患者が利用できることになりました。 この薬剤承認でもう一点、特徴的なことは、新規薬剤の承認と同時に診断薬を同時に製品化し、患者検体のCCR4発現の有無を検査で判定できた症例にのみ使用するということを明確にしたことでした。

 

提供 : 株式会社スズケン



前項へ 1 2 3 次項へ