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<スズケンDIアワー> 平成24年10月25日放送内容より スズケン

前立腺がん治療薬 デガレリクス酢酸塩徐放製剤


群馬大学大学院 泌尿器科学教授
鈴木 和浩

 本日は、新規前立腺がん治療薬である、デガレリクス酢酸塩徐放製剤(商品名:ゴナックス、以下デガレリクス)についてご説明いたします。デガレリクスは性腺刺激ホルモン(GnRH)のアンタゴニストとして本邦ではじめて使用可能となる薬剤です。従来から使用されているGnRHアゴニストとの内分泌学的作用の差を中心にその使用法について概説いたします。

icon デガレリクスの作用機序

デガレリクスの作用機序

 前立腺がんは男性ホルモン依存性を生物学的特徴として持っているため、男性ホルモン遮断療法(androgen deprivation therapy, ADT)が進行性前立腺がんでは第一選択となります。限局性前立腺がんでも放射線療法との併用や根治療法が適応とならない症例では施行され、本邦では広く行われている治療です。男性ホルモンは精巣のライディッヒ細胞から分泌されるテストステロンと副腎の網状層から分泌されるデヒドロエピアンドロステロンを代表とする副腎性アンドロゲンがあります。血液中のアンドロゲン活性の90%以上がテストステロンであり、このホルモンを低下させることがADTの主体となりますが、これまでリュープロレリン(商品名:リュープリン)やゴセレリン酢酸塩(商品名:ゾラデックス)といったGnRHアゴニストによる薬物治療が行われてきました。GnRHは視床下部から分泌され下垂体門脈系を通り下垂体前葉にあるゴナドトロピン産生細胞に作用してLHおよびFSHを分泌させます。GnRHアゴニストは投与初期にはLHおよびFSHの分泌を亢進させ、テストステロンを増加させますが、持続的にゴナドトロピン産生細胞に作用することによって、GnRH受容体のダウンレギュレーション(脱感作)が起こり、最終的にテストステロンの産生が抑制されます。今回ご紹介するデガレリクスはGnRHアンタゴニストであり、GnRHの受容体への結合を競合的に阻害します。このため、GnRHアゴニストでみられる初期のLH・FSHの上昇がないためテストステロンの一過性上昇が起こらないことがゴナックスの最大の内分泌学的特徴です。

内分泌療法別のホルモン動態の比較

 ADTとして両側精巣摘出術を加えたGnRHアゴニスト、GnRHアンタゴニストによる治療で生体におこるホルモン動態の変化をまとめてみます。両側精巣摘出術ではテストステロンの産生源である精巣が除去されることによってテストステロン低下が第1次的に起こり、下垂体でのフィードバックメカニズムによってLH・FSHが上昇します。GnRHアゴニストでは投与初期にLH・FSHの上昇にともないテストステロンの上昇がおこり、持続的な作用によってLH・FSHの低下からテストステロンの低下がもたらされます。GnRHアンタゴニストでは投与初期からLH・FSHの低下がおこりテストステロンも速やかに低下します。
 下垂体前葉のゴナドトロピン産生細胞のGnRH受容体の変化にも差があるとされています。GnRHアゴニスト投与後にはすでに述べたようにダウンレギュレーションがおこり受容体が減少するとされていますが、アンタゴニストでは受容体は保たれているとされています。この差は、薬物が有効濃度以下になった際、生体の反応、すなわちLH・FSHやテストステロンの抑制効果に違いが見られる可能性を持ちます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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