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<スズケンDIアワー> 平成24年11月1日放送内容より スズケン

DI実例集(176)医薬品適正使用のための添付文書の読み方


群馬大学病院薬剤部准教授・副薬剤部長
中村 智徳

icon はじめに

 本日は、医薬品の適正使用に向けて、添付文書の読み方について、ご説明申し上げます。
 先生方も既にご承知の通り、先頃発売されました、骨病変治療薬デノスマブ(商品名:ランマーク皮下注)で重篤な低カルシウム血症により二人の患者さんが命を落とされました。近年、画期的な新薬と言われ、全国的に販売促進がなされた新薬が、このように発売直後の重篤な副作用により、次々に不幸な事例を生み出しています。例としては、非小細胞肺ガン治療薬で、分子標的薬のホープとも言われたゲフィチニブ(商品名:イレッサ)。長い間、用量調節や食事制限といった問題を抱えてきた抗血栓塞栓症治療薬ワーファリンに代わり登場したダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(商品名:プラザキサ)。そして翻れば、抗ヘルペスウィルス薬として非常に優れた効能が期待されていたにもかかわらず、その使用上の重要な注意事項を見落とし、5フルオロウラシル製剤との併用により多くの患者さんが死亡したソリブジンなどが挙げられます。 そのたびに、医師および薬剤師がもっとその医薬品情報に注意を払い、製薬メーカーの一方的な情報提供活動だけに頼らない取り組みを行わなければならないとの決意表明がなされてはいますが、未だにこのような不幸な事例を回避できないジレンマに陥っております。今日はこのことを契機に、医薬品の適正使用のために注意して頂きたい添付文書の読み方について今一度考えてみたいと思います。

icon デノスマブにおけるブルーレターについて

 まずは、冒頭に取り上げましたデノスマブ(商品名:ランマーク皮下注120r)の副作用発現の経緯と、当薬剤の医薬品情報で注目すべき点を説明いたします。

重篤な低カルシウム血症に関するブルーレター

 すでにお聞及びのことと思いますが、平成24年9月12日に「ランマーク皮下注120mgによる重篤な低カルシウム血症について」というブルーレターすなわち「安全性速報」が発出されました。発売直後の平成24年4月17日から8月31日までの間に、重篤な低カルシウム血症の症例が32例報告され、うち本剤服用との関連が否定できない死亡例が2例報告されました。ブルーレターでは、本剤添付文書の使用上の注意に「警告」欄を新たに設け、「投与前および投与後頻回に血清カルシウム値を測定すること」ならびに「カルシウムおよびビタミンDの経口補充のもとに本剤を投与すること」が求められています。

ランマーク添付文書

 当初の添付文書でも、重度の腎機能障害のある患者で低カルシウム血症発現の恐れがあることが記載されており、「血清カルシウム値が通常より低い場合は、原則としてカルシウムおよびビタミンDの経口補充を行うこと」という注意喚起はありました。しかし今回の事例を受け、低カルシウム血症が認められた場合には必ずカルシウムおよび活性型ビタミンDの補充を行うことが求められております。また本剤は同様の効能を有するビスホスフォネート製剤ゾレドロン酸水和物(商品名:ゾメタ)などと比較して、腎機能障害を発症または悪化させる危険性が低いことが謡われてきたと思われますが、今回の事例を教訓として元々腎障害を持っている患者さんでは、「重篤な低カルシウム血症を起こす恐れがあるため、慎重に投与してください」との警告が付け加えられております。実はデノスマブの第III相臨床試験では、クレアチニンクリアランスが30mg/min未満の重度腎障害患者や透析を要する末期腎不全患者は試験対象からは除外されており、以前の添付文書およびインタビューフォームでは、「使用経験が少ない」ということを理由に腎障害患者には慎重投与することが記載されているに過ぎませんでした。しかし、今回の亡くなった患者さんの一人は重篤な腎障害を持っており、しかもカルシウム剤の補充は心肺停止状態になるまで行われませんでした。直接の死因は非小細胞肺がんの悪化によるものと報告されていますが、低カルシウム血症による突然の心肺停止状態を来たした可能性が否定できないとなっております。

 

提供 : 株式会社スズケン



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