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<スズケンDIアワー> 平成24年12月6日放送内容より スズケン

5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン


川崎医科大学小児科学教授
中野 貴司

icon はじめに

 ロタウイルスは、小児の急性胃腸炎の代表的な原因ウイルスです。下痢、嘔吐が主な症状で、発熱を伴うこともあります。潜伏期間は短く、1日から4日です。ロタウイルス胃腸炎は乳幼児がかかりやすく、生後6ヵ月齢頃から5歳未満の者が患者の大多数をしめます。特に低年齢児で重症化しやすく、入院患者の7割から8割は2歳未満です。

ロタウイルス胃腸炎の季節流行性

 また、流行に季節性があり、わが国では冬の後半から春にかけて患者が多発します。毎年、2月から3月頃が流行のピークです。さらにロタウイルスは、感染伝播力が非常に強く、保育所での集団発生や家族内感染が報告されています。医療機関でも施設内感染に注意しなければならない代表的な疾患です。
 同じように消化管感染症である赤痢や腸チフスは、公衆衛生の改善により制御されました。しかしロタウイルスは、わが国でも欧米諸国でも、衛生水準の向上だけでは流行を制御できていません。先進国でロタウイルス胃腸炎による重症患者や死亡例が途上国と比べて少ない理由は、栄養不良の小児が少ないという宿主側要因の差異と、医療機関や家庭での治療や患者管理がより適切に行われているからです。

ロタウイルス胃腸炎の患者数と疾患負担

 途上国・先進国を問わず、多くの子どもたちがロタウイルスにかかります。中には合併症をきたしたり、生命に関わる者が世界中で発生しているのです。

icon ロタウイルス胃腸炎の病像

 ロタウイルス胃腸炎は、他のウイルス性胃腸炎と比べて、下痢や嘔吐の程度がひどい場合が多いと言われます。そして、患者の多くをしめる乳児や年少児は、体内水分量や水分出納の特性から容易に脱水に陥りやすく、注意が必要です。特に途上国では、ロタウイルスによりたくさんの幼い命が失われていますが、医療資源が乏しいことに加えて、脱水の程度の評価法や適切な治療が普及していないために、十分な患者管理ができないことが深く関連しています。
 ロタウイルス胃腸炎で、けいれんや意識障害が認められる場合があります。脱水やそれに伴う電解質異常、低血糖によってこれらの症状が起こることもありますが、ロタウイルス自体も、中枢神経障害の原因となります。ウイルス感染に伴う脳症としてはインフルエンザがよく知られていますが、ロタウイルスでも脳症を発症することがあります。わが国の全国調査の結果では、小児の急性脳炎・脳症で感染性の原因微生物が確定されているもので最も頻度が高いのはインフルエンザウイルスですが、次いでヒトヘルペスウイルス6型・7型、そして第3位はロタウイルスです。
 また、胃腸炎罹患に伴って、嘔吐や下痢の消化器症状はそれ程ひどくないのに、反復性のけいれんを来たす“胃腸炎関連けいれん”に、診療の現場ではしばしば遭遇します。ロタウイルスだけでなく、ノロウイルスによる胃腸炎などでも認められますが、“胃腸炎関連けいれん”は、電解質異常や低血糖を伴わずに発症するので、何らかの機序による中枢神経合併症と考えられます。

ロタウイルス感染症とその合併症

 合併症は、ほかにもあります。著明な脱水の際に腎前性の腎不全が起こることはよく知られていますが、ロタウイルス胃腸炎に腎後性腎不全を合併し、その原因は尿路の結石形成であったという複数の報告があります。ロタウイルス胃腸炎の患者で腎不全の徴候が認められた場合、腎前性以外の原因も含めて鑑別診断し、適切な治療を行うことが大切です。ロタウイルス胃腸炎にともなう腎後性腎不全は、胃腸症状が始まって5日以上経過してから発症する場合も多いです。

 

提供 : 株式会社スズケン



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