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<スズケンDIアワー> 平成25年1月10日放送内容より スズケン

悪性軟部腫瘍治療薬 パゾパニブ塩酸塩


国立病院機構大阪医療センター整形外科部長
上田 孝文

 本日は、悪性軟部腫瘍(軟部肉腫とも呼ばれます)に対する新規分子標的治療薬としてこのたび製造・販売が承認されましたパゾパニブ(商品名:ヴォトリエント)について、ご紹介させていただきます。

icon 骨軟部悪性腫瘍(肉腫)治療の現況

骨・軟部悪性腫瘍(肉腫)の特徴

 軟部肉腫という疾患は、四肢や体幹部に好発する悪性腫瘍のことですが、単一の疾患ではなく、平滑筋肉腫・脂肪肉腫・滑膜肉腫・線維肉腫・横紋筋肉腫など様々な組織型および悪性度からなる多彩な悪性腫瘍の総称であります。

軟部肉腫の発生頻度

 しかしながら、軟部肉腫全体でも肺がん・乳がん・胃がん・大腸がん・白血病などすべての悪性腫瘍のうちの約1%程度の発生頻度と非常にまれな腫瘍であるため、これまでは軟部肉腫を単一の対象として抗腫瘍剤の開発や臨床試験が進められてきました。

成人型軟部肉腫に用いられる抗腫瘍剤の奏功率とregimenの変遷

 さらには、その発生頻度が少ない稀な疾患であることも相まって、軟部肉腫に有効な抗腫瘍剤はアドリアマイシン・イフォマイドなど、非常に限られたものしか存在しておりませんでした。一方、肺がんや乳がん、大腸がんなどmajorな固形がんや白血病・悪性リンパ腫など血液がんの領域では、その分子生物学的特徴を解析する基礎的研究の進歩に伴い、各がん種ごとに有効な分子標的治療薬が近年次々に開発され、現在の“がん個別化治療(いわゆるTaylor-made Therapy)”の発展へとつながっています。そこで、軟部肉腫を含む骨・軟部悪性腫瘍の領域においても、それぞれの組織型にターゲットを絞った新規抗腫瘍剤を開発していくべきであるとの認識が次第に重要視されるようになってきました。ここで問題となるのが、やはりその発生頻度の少なさですが、欧米においては多国間にまたがる国際的な多施設共同臨床試験を行うことで、肉腫に対する分子標的治療薬を含む新規抗腫瘍剤の開発や有効な化学療法レジメン探索のための臨床試験が積極的に行われるようになってきました。ところが、わが国においては、肉腫を専門とする臨床腫瘍内科医の人材不足や臨床試験を推進するための各種助成金など国家的財政支援の不足、さらには稀な疾患であることから製薬会社も新規治療薬の開発治験に乗り気でないことなどの理由で、肉腫患者に対する新規治療薬の本格的な臨床試験はほとんど行われていない状況が最近までずっと続いておりました。
 このような状況の中、ようやく2008年10月より進行性軟部肉腫に対する新規分子標的治療薬であるパゾパニブの治験が国際共同臨床試験に協力参加する形でわが国においても開始されました。そこで、今回ようやく軟部肉腫に対する新規分子標的治療薬として承認・発売開始されたパゾパニブという薬剤について、解説したいと思います。

 

提供 : 株式会社スズケン



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