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<スズケンDIアワー> 平成25年1月17日放送内容より スズケン

がん性疼痛治療薬 メサドン塩酸塩


獨協医科大学麻酔科学教授
山口 重樹

icon メサドンの特徴

 メサドンは非常に古いオピオイド鎮痛薬です。 開発当初,簡便に使用でき,かつ習慣性の低い鎮痛剤として,外科手術への応用を考えていたようです。

メサドンの特徴

 メサドンの化学構造は,モルヒネと全く異なるもので,オピオイド鎮痛薬の中で,最も単純な構造と言われています。
 メサドンの臨床応用は,当初,オピオイド依存の治療薬として広く使用が開始されました。特に,米国ではベトナム戦争を契機に社会問題となったジアセチルモルヒネであるヘロインの依存に,メサドンは積極的に使用されるようになりました。
 メサドンがヘロイン依存の治療に脚光を浴びた理由は,半減期が長く,乱用に好まれにくい,非常に安価なオピオイドであるなどです。

メサドンの特徴

 そして,世界保健機構が必須医薬品リストにメサドンを掲載してからは,がん疼痛治療薬としても脚光を浴びるようになっています。
・ 口剤としての生物学的利用能が高い
・ 活性代謝物が存在せず,腎機能低下症例に有用である
・ 他のオピオイドに比較して低価格である
・ 他のオピオイドとの交差耐性が少ない
・ NMDA 受容体拮抗作用がありオピオイド抵抗性の神経障害性疼痛に有効である
・ NMDA受容体拮抗作用によりオピオイド耐性と痛覚過敏を回復する
・ 半減期が長く,1日2〜3回の投与で疼痛管理が可能
などの点で,がん疼痛治療への可能性が指摘され始めたと聞いています。
 特に,メサドンがオピオイドとしての作用のほかに,NMDA受容体の拮抗作用を有していることがわかってからは,その可能性が注目を浴びるようになりました。
 メサドンは,D型とL型異性体のラセミ体で,L型異性体がモルヒネと同程度の鎮痛作用を,D型異性体がNMDA受容体拮抗薬としての作用を有していると言われています。

icon 国内採用検討の経緯

 メサドンは1970年代半ばから米国では鎮痛薬としての処方が許可され,その有効性が報告されて多くの国においては1990年代から処方が開始されています。
 海外でのメサドンの鎮痛薬への応用の経過もあって,日本においてもその採用が検討されるようになりました。
 そして,がん疼痛治療に携わる多くの医師からの要望を受けて,これまでに臨床治験が行われました。
 メサドンのがん疼痛における必要性を訴えていたのは,医療従事者からだけではありませんでした。がん疼痛に悩む患者やその家族からもその声は聞かれていました。がん対策基本法の成立を後押ししたといわれている,元国会議員の故山本孝志は,自分の闘病生活の中で,有識者からの意見をまとめて「国内未承認薬,医療用麻薬,メサドンについて」という詳細なレポートを作成し,がん疼痛治療におけるメサドンの必要性を訴えていました。

icon メサドンの投与と留意点

メサドンのよい適応

 現在,本邦においてメサドンは「他の強オピオイド鎮痛剤で治療困難ながん疼痛」に対して承認,薬価収載され,発売を待つのみとなっています。本邦では,「メサペイン」という商品名で,5mg錠,10mg錠の使用が開始される予定です。
 具体的な使用方法は,他の強オピオイド鎮痛剤から切り替えて使用し,切り替え前の強オピオイドの投与量を勘案して,メサドンとして1回5mgから15mgを1日3回経口投与するとされています。そして,必要に応じて漸増することになります。
 ただし,その処方開始にあたっては,いくつかの制限が設定されています。
例えば,
・ がん疼痛の治療に精通し,メサドンのリスク等について十分な知識をもつ医師のもとで,適切と判断された症例にのみ投与されること
・ 経口モルヒネ換算量で1日60mg未満での投与は推奨されないこと
・ 初回投与後や増量後少なくとも7日間は増量を行わないこと
などです。
 誰もが処方できわけでなく,誰にでも処方できるわけでないということになります。
 メサドンは,使用し難いオピオイド鎮痛薬かもしれませんが,モルヒネ,オキシコドン,フェンタニルによる鎮痛効果が不十分な症例や鎮痛耐性が疑われるような症例ではその効果が期待されます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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