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<スズケンDIアワー> 平成25年1月17日放送内容より スズケン

がん性疼痛治療薬 メサドン塩酸塩


獨協医科大学麻酔科学教授
山口 重樹

icon 海外の症例から

 私はここ数年,米国の施設を訪問して,オピオイド事情を見学してきました。
 その中で,私が米国の病院でメサドンによる痛みの治療の実際を見学した際に,非常に印象的であった症例を紹介します。
 52歳の男性で脊髄腫瘍により激しい神経障害性疼痛を訴えていました。
 メサドンの投与が開始されるまでにオキシコドンを1日150mg内服していましたが,一向に症状は改善されませんでした。
 そして,メサドン投与後は劇的に症状が改善され,在宅での療養が可能となりました。メサドンの投与量は1日20mg程度でした。
 このように,強オピオイドの増量にもかかわらず痛みの軽減が得られない症例において,有用な選択肢となります。
 しかし,メサドンが有効なオピオイド鎮痛薬である一方,危険性の高いオピオイド鎮痛薬でもあります。
 これまでに使用経験の多い米国では,メサドンは諸刃の剣であると言われています。
 その理由としてはいくつか挙げられています。
 まずは,
・ メサドンの半減期が長く,個人差が大きいということです。
 平均的には24時間前後と言われていますが,その幅は12時間から150時間とも言われています。
また,
・ 鎮痛効果の持続時間に比べ,呼吸抑制などの副作用持続時間が非常に長いため,不用意な増量に伴う過量投与となり,呼吸抑制などの重篤な有害事象を引き起こしかねないことが知られています。
 このことから,用量調節は個々に慎重に時間をかけて行わなければなりません。
 海外においても,投与開始あるいは増量時にはその後の7日間の増量が禁止されるとのことです。
次に,
・ メサドンと他の薬剤との相互作用についてです。
 メサドンは肝臓のチトクローム系で代謝を受けるため,他の薬物との相互作用を受けやすいと言われています。そのため,投与開始前に併用薬を十分に吟味する必要があります。
 そして,最も難しいところが,
・ 他のオピオイドの換算比が多様で個人差も大きい点です。
 オキシコドン,フェンタニルなどのオピオイドではある程度明確なモルヒネとの換算比が確立されていますが,メサドンでは目安となる換算比が提示されていますが,個々の症例,そしてメサドン投与前のオピオイド投与量ごとに異なる可能性が高いです。

メサドンとモルヒネの換算比

 例えば,モルヒネ少量の場合であれば換算比は1対1でありますが,モルヒネが1日100mgを越えた際には換算比は1対5,そしてモルヒネが1日1,000mgを越えた際には換算比は1対15になると言われています。
 今後,他のオピオイドからメサドンへのローテーションに慣れるというのではなく,慎重に投与量を決定し,投与後1週間にわたって注意深く観察していかなければならないと思われます。

長いメサドンの半減期

 その他,メサドンの高用量投与に伴う心電図上のQT延長による心臓突然死などの危険性が指摘されています。

 

提供 : 株式会社スズケン



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