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<スズケンDIアワー> 平成25年3月7日放送内容より スズケン

アミノグリコシド系抗菌薬 吸入用トブラマイシン


みよし市民病院 院長
成瀬 達

icon 嚢胞性線維症における肺病変

嚢胞性線維症の気道上皮膜における水とイオンの動態

 嚢胞性線維症で最も重要な問題は、死因の9割を占める肺病変です。気道の表面は薄い気道液により覆われています。この気道液の厚さはCFTRクロライドチャネルによる水の分泌と、ナトリウムチャネル(ENaC)による水の吸収により調節されています。気道液の表面には粘液層があり、粘液に付いた細菌は上皮細胞の表面にある線毛により上気道に送られ、痰として喀出されます。嚢胞性線維症ではCFTRの異常により水分泌が減少し、ナトリウムチャネルの活性化により水の吸収が亢進し、粘液の分泌が増加します。気道の表面は水分が少なく、粘液の多い粘稠な分泌液に覆われます。その結果、粘液線毛クリアランスが障害され、末梢の気道や気管支腺に分泌液が貯留して閉塞しやすくなります。

嚢胞性線維症における肺の病態

 このような気道の状態は、細菌感染が慢性的に持続する理想的な環境となります。嚢胞性線維症で慢性感染を起こす代表的な菌種は、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、セパシア菌です。黄色ブドウ球菌の感染は小児期に始まり、米国の成人患者の18?26%に検出されます。緑膿菌感染は小児期から思春期に始まり、成人患者の80%?90%が陽性となります。緑膿菌は、嚢胞性線維症に特徴的な「ムコイド型」となり、気道上皮にマイクロコロニーを形成します。ムコイド型の緑膿菌は、アルギネイトと呼ばれる菌体外多糖を分泌します。アルギネイトのバイオフィルムに囲まれた緑膿菌は、抗生剤や白血球による攻撃に抵抗性をもちます。セパシア菌は自然界の水や土壌に広く生息するグラム陰性桿菌ですが、成人患者の5%で陽性です。セパシア菌はほとんどの抗生剤に耐性をもちます。約20%の患者では感染後、数週間から数ヶ月で死に至る「セパシア症候群」と呼ばれる劇症的な経過をとることが知られています。
 気道に定着した緑膿菌は、白血球による貪食や殺菌作用に抵抗性があり、感染が慢性的に持続します。その結果、多量の炎症細胞が気道粘膜に浸潤し、炎症が慢性化します。多量の好中球より放出されたエラスターゼは、粘液腺の過形成を促すために粘液分泌が増加します。また、気道粘膜を障害して気管支拡張症を起こします。死滅した多量の好中球からは、DNAが放出されます。粘稠性が極めて高い多量のDNAにより、気道の分泌液の粘性は更に高くなります。慢性の細菌感染と炎症の急性増悪と寛解を繰り返し、徐々に肺の障害が進み、最終的には呼吸器不全となります。

icon 嚢胞性線維症の治療

 現在、嚢胞性線維症の根本的治療はありません。ほとんどの患者は呼吸不全で亡くなるので、治療の目標は肺機能の維持にあります。肺機能の評価には%1秒量(% FEV1)を用います。米国の基準では90%以上が正常、70-89%が軽症、40-69%が中等症、 40%未満が重症です。少なくとも半年に1回は測定します。嚢胞性線維症は消耗性の疾患です。食事療法の基本は十分なカロリーの摂取です。カロリー不足を補うためには、間食も必要です。特に膵外分泌不全のある患者では、十分な膵酵素の補充療法を行い、栄養状態を良くする必要があります。毎日、30分程度の身体運動は、気管支拡張作用、喀痰量の増加、肺機能の改善作用があります。

icon 肺機能の維持療法と増悪期の治療

嚢胞性線維症における肺の管理と治療

 嚢胞性線維症の肺治療の基本は、気道のクリアランスと、慢性気道感染症のコントロールです。安定期の一日の喀痰量(mL)と肺機能を測定して、これを基準値とします。急性増悪期には、抗生剤の点滴治療を行いながら、理学療法を強化します。化学療法の基本は耐性菌を減らすため、細胞壁の合成を阻害するβラクタム系の抗生剤とタンパク合成を阻害するアミノグリコシド系の抗生剤など、作用機序の異なる抗生剤を併用することです。2-3週間の治療後、自覚症状、喀痰量と肺機能を評価します。基準値に戻ったら急性期の治療は終了します。
 安定期には、栄養療法と運動療法を行いながら、毎日、自宅で肺の維持療法を行います。理学療法とドルナーゼアルファ、高張食塩水、気管支拡張薬の吸入療法を組み合わせることにより、気道のクリアランスを維持します。緑膿菌感染を制御するために、トブラマイシンの吸入療法を行います。

 

提供 : 株式会社スズケン



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