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<スズケンDIアワー> 平成25年4月11日放送内容より スズケン

腸管アメーバ症治療薬 パロモマイシン硫酸塩


獨協医科大学越谷病院感染制御部教授
春木 宏介

icon パロモマイシン硫酸塩の概要

 ではここで今回発売されたパロモマイシン硫酸塩(商品名:アメパロモ)について述べたいと思います。

 開発の経緯

 先ほど現在わが国で赤痢アメーバの治療に用いられているメトロニダゾールやチニダゾールが栄養型のみで嚢子には効果が少ないと申し上げましたが、この嚢子が残ることによる再発する例やこの嚢子を無症状で排出する、いわゆる健康保菌者あるいは保原虫者すなわちキャリアーの存在が公衆衛生学的にも問題となります。急性期の治療ののちこの嚢子を排泄するので感染源となるわけです。よってこの嚢子を除去する必要が出てまいります。今回認可されたパロモマイシン硫酸塩の出番となるわけです。パロモマイシンはアミノグリコシド系の薬剤でネオマイシンの仲間に当たります。分子量は615.63で水に溶けやすくエタノールに溶けにくい特徴を持っています。作用機序は16SリボゾームRNAに作用しタンパク質の合成を阻害することによります。よって薬剤としての位置づけとしてメトロニダゾールなどニトロイミダゾール系薬剤による急性期の治療ののち嚢子の排泄を阻止する目的で投与すべきということができます。このような薬剤をルミナルドラッグといいます。腸管から吸収されず管内で高濃度を保つためこのような名前がついています。規格は250mgカプセルです。投与方法ですが海外では15−25mg/kg/day 3−4分服 5日以上との記載がありますが大体1回量500−650mgを1日3回合計1500−1950mg10日間の投与が考えられます。大まかには1日1500mg10日間、すなわち1日6カプセルと考えてよさそうです。無症候性嚢子排泄者の85−87%に効果があるといわれています。有害作用はアミノグリコシド系の有害作用に準じたものです。吸収された場合には聴毒性や腎毒性が見られます。また薬剤アレルギーや悪心嘔吐などの消化器症状が出る場合があります。腸内細菌にも効果を示すため偽膜性腸炎にも注意が必要です。ルミナルドラッグであり通常は吸収されませんが、腸管の潰瘍あるいはイレウスなどの状況では吸収され有害作用が出ることが想定されるため投与は禁忌となります。また妊婦にも禁忌とされています。アメーバ赤痢発症後であれば投与すべき薬剤ではあります。また老人健診施設、刑務所など施設内感染の可能性がある場合にはよい適応となると思われます。しかし無症候性に嚢子を排泄している例の中にはエントアメーバディスパーとよばれる形態学的には赤痢アメーバと区別がつかない無害なアメーバの存在があります。このような場合、遺伝子学的検査での鑑別が望まれますが全例で行うわけにはいきません。また検査をできる施設が限られ、商業ベースで検査センターでは行っていないため、パロモマイシン投与は状況を考えて行う必要があると思われます。 パロモマイシンは、アメーバ以外には条虫や鞭虫に効果がありますがわが国では適応とはなっていません。細菌では大腸菌やサルモネラ属、ブドウ球菌にも効果があるとされ動物には使用されています。

icon まとめ

 今回、パロモマイシン硫酸塩がファイザー株式会社より腸管アメーバ症の治療の適応薬として販売されました。アミノグリコシド系薬剤で腸管からは吸収されません。主として赤痢アメーバの嚢子に効果があり、ニトロイミダゾール系薬剤による急性期治療ののちの赤痢アメーバの再発や公衆衛生学的観点からの嚢子排泄者の治療に用いることが期待されます。投与方法は1カプセル250mgを1回2カプセル1日3回投与10日間が基本と考えられます。有害作用としてはアレルギーのほか消化器症状が中心です。禁忌としては消化管の潰瘍がある場合、イレウス、妊婦などがあげられます。パロモマイシンにより今後アメーバ嚢子の治療が進むこととなり国内における伝搬阻止の可能性が高まることが期待されます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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