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<スズケンDIアワー> 平成25年5月2日放送内容より スズケン

DI実例集(178)医薬品評価における抗菌薬の特徴


広島大学病院薬剤部薬剤主任
冨田 隆志

icon はじめに

 本日は,抗菌薬の適正使用を推進していく上で,それぞれの薬剤をどう評価し,施設内での位置づけをどう定めていくかについて紹介させていただきます。 感染症治療薬が対象とする病原微生物には細菌,真菌,ウイルス,原虫・寄生虫などがありますが,ここでは基本的にすべてを含むものとして抗菌薬と表現させていただきます。

icon 抗菌薬の評価上の特徴

 抗菌薬を評価する上で必要な視点として,1.薬剤耐性,2.承認されている適応菌種と感受性菌の乖離,3.PK-PD,4.体内分布・組織移行,が挙げられます。

1.薬剤耐性の問題

耐性菌の問題

 抗菌薬は,患者・疾患の特性のみでなく,病原体の特性,特に薬剤耐性の程度によっても有効性が変化する特徴を持ちます。
 薬剤耐性に関する抗菌薬の評価点としては,現状の耐性の程度の他に,耐性化の起こりやすさ,耐性化が進んでしまった場合の代替薬の有無があり,これらを加味したうえで,自施設で使用を推奨しうるか,非常時の選択肢に近い状態に置いておくべきかを考慮することになります。既存薬であれば自施設でのアンチバイオグラム(耐性頻度)が最も重要になりますが,情報が得られなければ,地域での状況,国内の状況から判断していく必要があります。国内全体での動向については,厚生労働省のサーベイランス事業であるJANIS(http://www.nih-janis.jp/)の情報や,製薬企業が展開している全国サーベイランスのデータが参考にできます。
 新薬の場合,承認時データとして提示されているMIC分布が,自施設での分布に外挿できるかどうか,データの収集背景などから判断する必要があるでしょう。

2.適応菌種と感受性菌の乖離

適応菌種と感受性菌の乖離

1)有効だが未承認
 妊婦のトキソプラズマ症に対するアセチルスピラマイシン,無鉤条虫症に対するプラジカンテルなど,一般的に第一選択とされるものが適応外という例は抗菌薬にも認められます。社会保険診療報酬支払基金が審査上使用を認めるとしている事例にも抗菌薬が多く含まれていますが,自施設で適応外使用をどこまで認め,どう制限するのかを,整理しておく必要があります。

2)実際には無効だが承認されている
 代表的な例としては,2009年に適応菌種からアスペルギルス属が削除されたフルコナゾールが挙げられるかと思います。セフタジジムのブドウ球菌属等のグラム陽性菌適応,セフォゾプランの腸球菌適応など,完全に無効ではないものの,他剤に比べ十分な抗菌活性を有しているとは言えず,優先的に使用するべきでないものもあります。
 このようなケースは限られたものですが,実際に使われてしまわないように周知,ルール化しておく必要があります。
 過去には有効だったものの,現在の一般的な感受性パターンではそのほとんどが耐性化しており,臨床的に有効性が期待できないという場合もありえます。個別の適応菌種についてのデータを確認するとともに,先述のように現時点での感受性パターンについても検討を加えるべきでしょう。

3)承認はされているが通常使用しない
 有効ではあっても,通常最優先では使用する必要がないものも多く存在します。抗菌薬の使用状況としては,起炎菌を想定する段階で開始するエンピリカル治療と,治療対象菌の同定と感受性のデータが得られたのちの標的治療がありますが,多くの広域スペクトラム抗菌薬は,標的治療では使用する必然性が低くなります。
 一例として,最近アンピシリン・スルバクタム配合剤の適応菌種に肺炎球菌が追加されましたが,肺炎球菌のペニシリン耐性は標的部位変異が要因であり,β-ラクタマーゼ産生によるものではありません。つまりアンピシリン耐性の肺炎球菌に対してスルバクタム配合剤を使用しても意味はありませんし,逆にアンピシリン・スルバクタム配合剤に対して感受性の肺炎球菌は,通常アンピシリン単剤でも治療が可能なはずです。市中肺炎に対するエンピリカル治療で,肺炎球菌を含む推定起炎菌をカバーする際に本剤を用いることに異論はありませんが,標的治療における意義は乏しいと言えます。
 このように,薬剤の位置づけを考える上では,エンピリカル治療と標的治療での「必然性」の違いを意識する必要があります。
 また,抗菌薬には非常に多くの適応疾患が承認されているものも多いですが,新薬承認時点で得られているデータを疾患別に見てみると,治験症例数が極めて少ない疾患も多数見受けられます。有効性について本当に信頼に値するデータが得られているかどうか,慎重に判断する必要があるでしょう。

 

提供 : 株式会社スズケン



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