→ 番組表はこちら
→ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成25年5月16日放送内容より スズケン

パーキンソン病およびレストレスレッグス症候群治療用貼付剤 ロチゴチン


自治医科大学神経内科学准教授
藤本 健一

 このたび新しいドパミンアゴニストであるロチゴチン(商品名:ニュープロ パッチ)が発売されました。効能・効果は、パーキンソン病および、中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群です。ロチゴチンの最大の特徴は、従来薬とは異なり、貼り薬であることです。皮膚から徐々に吸収されますので、24時間,持続的な薬剤供給が可能です。

icon パーキンソン病の薬物治療の歴史

 なぜ持続的な薬剤供給が重要なのでしょう。パーキンソン病の原因は、脳内のドパミンの減少です。ドパミンを補充すればよいのですが、ドパミンは血液脳関門を通過しません。そこで、血液脳関門を通過する前駆物質であるレボドパが治療薬として使われます。レボドパは血中半減期が60分から90分と短いため、薬効があって動けるONと、薬効が切れて動けなくなるOFFが出現することがあります.Wearing-off現象です.患者さんはいつも動けなければ、そんなものだと諦めるのでしょうが、ONを経験すると、動けないOFFを非常に辛く感じます。OFFを回避しようと、レボドパをたくさん服薬すると、今度は血中濃度が高くなり過ぎて、身体が勝手に動く「ジスキネジア」が出現します。 Wearing-off現象やジスキネジアをまとめて運動合併症と呼びます。その治療のために、作用時間の長いドパミンアゴニストが開発されました.1980年代から90年代にかけて,ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリンなど、麦角構造を持つ薬剤が開発されました。その後、ドパミンアゴニストで治療を開始すると運動合併症が起こりにくいことが明かとなり、Continuous Dopaminergic Stimulationの掛け声のもと、ドパミンアゴニストで治療開始するようになりました。
 2000年代に入ると、麦角構造を持たないプラミペキソール、ロピニロールなどの薬剤が開発されました。頻度は少ないものの、麦角系のペルゴリドやカベルゴリンでは、心臓の弁の肥厚や、肺線維症が報告されています。非麦角系のドパミンアゴニストは、心臓合併症や肺線維症を起こさないため、パーキンソン病治療の第1選択薬となりました。これらの薬剤は、従来は1日3回服薬が必要な速放錠でしたが、より持続的なドパミン受容体刺激を目指して、 1日1回服薬ですむ徐放化製剤が相次いで発売されました。しかし、ゆっくり解ける徐放錠とは言っても、服薬後12時間を過ぎると、徐々に血中濃度が低下しはじめ、24時間後にはゼロになります。

icon 貼付薬ロチゴチンの開発

血漿中濃度 単回投与

 今回発売されたロチゴチンは非麦角系ドパミンアゴニストの貼付薬です。皮膚から徐々に吸収されるため、持続的な薬剤供給(continuous drug delivery)が可能で、血中濃度は24時間ほぼフラットに保たれます。
 この半世紀の間に、パーキンソン病の薬物療法は飛躍的に発展しました。しかし、未だ解決されない問題のひとつに、夜間症状があります。ふるえが気になって眠れない、体位変換ができずに眠れない、さらにレストレスレッグス症候群や周期性の四肢運動、こむらがえり、夜間や早朝の有痛性ジストニア、さらに夜間頻尿、異常発汗、痛み、レム睡眠行動障害や悪夢など、様々な非運動症状が認められます。夜間症状は患者本人のみならず、夜中に頻回に起こされる介護者にとっても辛いものです。

早朝に運動症状を有するパーキンソン病

 ヨーロッパで行われたRECOVER studyにおいて、ロチゴチンは寝返り不能によるイライラ、四肢の疼痛による夜間覚醒、四肢の筋肉の引きつりによる夜間覚醒、いびきや呼吸困難による夜間覚醒、四肢の不快による睡眠障害、四肢を動かしたい衝動による不眠、有通性異常肢位による早朝覚醒、寝付き不良、起床後の眠気の各項目においてプラセボに比べて有為な改善を認めました。
 さて、ドパミン受容体にはD1からD5まで、サブタイプが存在します。D2、D1受容体は運動系に、D3受容体は精神系に関係します。ロチゴチンはD2、D1受容体よりも、相対的にD3受容体に親和性の高いドパミンアゴニストです。パーキンソン病の患者さんは、几帳面で羽目を外さず、心配性で取り越し苦労をするような性格のことが多いのですが、D3受容体を刺激することで不安が軽減し、意欲が出て活動的になることがあります。その一方で、D3受容体の過剰刺激は衝動制御障害や反復常同行動といった、脱抑制状態を誘発します。最近の研究では、これらの脱抑制状態は同じ薬剤を用いても、作用時間の短い速放錠に多く、徐放錠では少ないことが示されています。貼り薬であるロチゴチンは、D3刺激効果で不安を軽減する一方、脱抑制状態を起こしにくいことが示されています。

 

提供 : 株式会社スズケン



1 2 3 次項へ