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<スズケンDIアワー> 平成25年6月20日放送内容より スズケン

機能性ディスペプシア治療薬 アコチアミド塩酸塩水和物


公立黒川病院 管理者
本郷 道夫

 しかし、その成績については必ずしも充分に科学的な検証が行われたかどうかが不明な点が残されています。治療指針の決め手となるCochrane Database のメタ解析はこの数年間、改訂作業が止まっていますが、消化管運動賦活薬と酸分泌抑制剤で効果があるとすることが示されています。しかし、いずれの薬剤の成績も出版バイアスの可能性が否定できないことから、その効果は必ずしも明確なものとは言い難いと結論付けられています。そのような中、日本で開発されたアコチアミド塩酸水和物(acotiamid/商品名 アコファイド)は機能性胃腸症治療薬として、プラセボを対照薬とした大規模比較対象試験でその効果が確認されました。

各症状のレスポンダー率

 その効果は主として食後の上腹部の不快症状の改善の点で確認されています。当然ですが、薬物治療に反応が無い時には、他疾患を疑って検索を勧めることも重要です。内視鏡検査をしていない場合には内視鏡での確認を、内視鏡検査で異常がないのに薬物治療に反応がない時には他疾患を考えた検索が必要になります。

icon 消化管運動賦活薬の特徴とアコチアミドの位置づけ

 一般に、消化管運動賦活薬/Prokinetics の特徴は、消化管運動賦活作用と消化管由来の不快症状の改善作用とを有することです。これまでに臨床で用いられてきた消化管運動賦活薬には、5HT4受容体刺激薬、ドパミンD2 受容体拮抗薬、オピオイド受容体作動薬があり、いずれも消化器不快症状の改善と消化管運動賦活作用とがあることが示されています。消化管運動のみを強力に賦活するpromotility agent /消化管運動刺激薬と分類されるエリスロマイシンおよびその誘導体では、消化管運動は強力に刺激されるものの、消化器症状改善の効果は認められず、消化管運動賦活薬 prokinetics と消化管運動刺激薬 promotility agent との違いが明らかにみられます。
 Acotiamideはprokinteticsに分類される薬剤です。薬理学的にはコリンエステラーゼ阻害作用があり、神経伝達機構におけるアセチルコリンの作用を増強することが確認される薬剤で、これまでのprokineticsと呼ばれた薬剤とは大きく異なる作用機序を持っています。臨床薬理学的検討では、消化管運動賦活作用と症状改善作用とが確認されるため、prokineticsというカテゴリーの薬剤と考えることができます。世界的にみても、プラセボを対照とした大規模試験でその優位性が確認された薬剤として大きな期待を受けている薬剤です。その作用機序については、神経-筋接合部でのコリン作動性機構の増強ならば、平滑筋収縮促進の作用に留まると考えらますが、実際にはより協調性の高い蠕動性運動の促進および受容性弛緩の増強が確認されています。また、臨床治験の成績からすると、運動機能異常是正よりも内臓知覚経路のどこかに作用していることが考えられる成績であることが見受けられます。もしもこの薬剤の知覚経路での作用が明らかになると、内臓知覚系でのコリン作動性機序の関与という新しい経路の可能性があきらかになるかも知れません。

 機能性胃腸症という、必ずしも明確とは言い切れない病態に、新たな治療薬が登場したことで、臨床において患者の症状改善に役立つとともに、その病態解明にも大きな進歩がもたらされることを期待しています。

 

提供 : 株式会社スズケン



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