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<スズケンDIアワー> 平成25年7月11日放送内容より スズケン

パーキンソン病治療薬 イストラデフィリン


花の舎病院 院長
近藤 智善

 パーキンソン病治療のゴールドスタンダードがL-DOPA治療であることはいうまでもありません。
 L-DOPA治療が一般化して、すでに約45年が経過していますが、この間、数々の薬剤が開発されて来ました。代表的なものとして、ドパミンに代わってドパミン受容体を直接刺激するドパミンアゴニスト、ドパミンの代謝を抑制するモノアミン酸化酵素阻害薬;セレギリン、末梢血液中のL-DOPA代謝を抑制するカテコール-O-メチル転移酵素阻害薬;エンタカポンなどがあげられます。いずれも脳内のドパミン受容体刺激にかかわる薬剤でした。
 経過の長いパーキンソン病では治療上様々な問題が生じますが、ドパミン神経系の問題に限ってみても、数々の薬剤を得た現在も十分解決されたとは言えないのが現状です。
 これから述べるイストラデフィリン(商品名:ノウリアスト)は、アデノシンA2a受容体拮抗薬で、ドパミン神経伝達を修飾する薬剤とは全く異なる作用機序を持った薬剤です。

icon イストラデフィリンの作用機序

ノウリアストの作用機序

 アデノシンはアデノシン3リン酸の加水分解産物ですが、体内に広く分布していて、細胞表面上の受容体と結合し、様々な生体反応を調節しています。
 4種類知られているアデノシン受容体のうちA2a受容体は脳内では、線条体、淡蒼球など大脳基底核の間接経路を構成するGABA/エンケファリンを含む中型有棘ニューロンに特異的に発現しています。
 大脳基底核回路は、大脳皮質から線条体に投射するグルタミン酸作動性神経の投射を受け、線条体、淡蒼球外節、視床下核を経て淡蒼球/黒質網様部に投射する間接経路と、線条体から直接、淡蒼球内節/黒質網様部に投射する直接経路によって調節されています。
 大脳基底核回路は黒質緻密部から投射するドパミンニューロンによって調節されており、パーキンソン病はそのドパミン欠乏によって大脳基底核回路の変調を生じた状態ということができます。
 間接経路を構成するGABA/エンケファリン含有の中型有棘ニューロンにはドパミンが結合すると抑制がかかるD2受容体が発現していますので、ドパミンが作用すると、このニューロンは抑制されます。パーキンソン病では、ドパミンが欠乏していますので、このニューロンは抑制がとれた状態となっており、その中型有棘ニューロンの投射先である淡蒼球外節ではGABAの遊離が促進された状態となります。
 A2a受容体は、線条体内では、この中型有棘ニューロンの興奮性を調節し、その投射先である淡蒼球外節ではGABAの遊離を調節していまして、A2a受容体遮断薬であるイストラデフィリンが作用しますと結果として淡蒼球外節における中型有棘ニューロンからのGABA遊離は減少します。
 つまりドパミン欠乏の結果、間接経路の中型有棘ニューロンが過剰興奮となっているパーキンソン病では、イストラデフィリン投与によって、その投射先・淡蒼球外節での過剰なGABA放出が正されることになるわけです。
 動物を用いたパーキンソンモデルの薬理実験では、イストラデフィリンによる淡蒼球でのGABAの遊離抑制やイストラデフィリンの用量に依存した自発的な運動量の増加や運動不全スコアの改善が観察されています。またジスキネジアモデルではL-DOPAによって生じたジスキネジアの増強は認められていません。

 

提供 : 株式会社スズケン



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