最近の副作用情報から「医薬品・医療機器等安全性情報No.251、252」
2008/12/30(火) 00:00

薬学の時間
2008年12月30日放送分
最近の副作用情報から「医薬品・医療機器等安全性情報No.251、252」
厚生労働省医薬食品局安全対策課
野呂 拓也

医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度
 みなさん、こんばんは。厚生労働省医薬食品局安全対策課でございます。本日は本年10月及び11月に発行いたしました「医薬品・医療機器等安全性情報」の第251号及び第252号に掲載されました主な内容について、ご紹介いたします。
 始めに、第251号から、「医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度について」をご紹介いたします。 


 医薬品は、国民の健康の保持増進に欠かせませんが、その使用に当たって万全の注意を払っても、なお副作用の発生を防止できない場合があります。また、生物由来製品についても、最新の科学的な知見に基づいて、安全対策が講じられたとしても、感染被害のおそれを完全になくすことはできません。
 「医薬品副作用被害救済制度」は、医薬品が適正に使用されたにもかかわらず、発生した副作用による疾病、障害等の健康被害を受けた方の迅速かつ簡便な救済を図ることを目的として、医薬品製造販売業者の社会的責任に基づく拠出金等を財源とする公的な制度です。昭和55年に創設されて、四半世紀以上が経過し、これまでに7,400人余りの方々に給付が行われています。
 また、平成16年には、生物由来製品が適正に使用されたにもかかわらず、発生した感染による疾病、障害等の健康被害を受けた方の迅速かつ簡便な救済を図ることを目的とし、同様に公的な制度である「生物由来製品感染等被害救済制度」が創設されました。
 両制度の詳細については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、「機構」と言います。)のホームページに掲載されております。なお、動画の配信もありますので、ご参照いただければと思います。
 近年,両制度における請求件数は増加していますが、なお一層の周知を図り、健康被害を受けた方々に、この制度を活用していただくために、制度の概要を紹介いたします。

請求手続き等について、健康被害者に伝えてほしいこと
(1)救済給付の請求方法 
 副作用や感染によって健康被害を受けた本人やその遺族等、給付を受けようとする方、つまり「請求者」が直接、機構に対して行う必要があります。
(2)給付の種類等
医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金、葬祭料の7種類です。
(3)必要な書類
○医師の診断書 ○投薬証明書 ○受診証明書 などになります。
 救済給付を受けるためには、発症や感染した症状、経過と、それが医薬品などを使用したことによるものだという因果関係を証明しなければなりません。
 そのため、請求する際には、副作用や感染による健康被害の治療を行った医師の診断書や投薬証明書、あるいは薬局等で医薬品を購入した場合には、販売証明書の提出が必要となります。請求者は、それら書類の作成を医師等に依頼し、請求書とともに、機構に提出することになります。
(4)健康被害救済制度の問い合わせ先
 給付の請求をするためには、給付の種類に応じた請求書、診断書、受診証明書、投薬証明書などの書類が必要となるため、請求に当たっては、事前に機構の「救済制度相談窓口」に電話あるいはEメールにて相談をお願いします。
電話番号:0120-149-931(フリーダイヤル)
受付時間:[月~金]9時~17時30分(祝日・年末年始を除く)
Eメール:kyufu@pmda.go.jp

救済給付の対象とならない場合
 これまでに、7,400人余りの方々に給付が行われてきた一方で、1,200人余りの方々には、不支給の決定がなされてきました。
 平成19年度の不支給の理由として、「因果関係なし」と「入院を要する程度または障害の等級に該当しない」とで、7割強を占めております。医薬品が使用されていても、発現した健康被害と当該医薬品との因果関係が認められない場合、入院を必要とする程度の医療が行われなかった場合等では不支給となります。
 また、「不適正目的または不適正使用である」として不支給決定された事例が約2割あります。とりわけ、添付文書の使用上の注意に従わずに使用された場合は、医薬品等の使用によって生ずるおそれのある健康上の危害を防止するという観点からも問題でありますが、健康被害が発生したとしても本制度による救済がなされないおそれがあります。
 なお、慢性B型肝炎・慢性C型肝炎等に用いられるインターフェロン製剤については、これまで対象除外医薬品でしたが、平成20年4月1日に対象除外医薬品の指定が解除され、救済対象となりました。ただし、一部の使用目的で使用された場合は、引き続き対象除外ですので、ご注意ください。この詳細は機構までお問い合わせ願います。
、医師や薬剤師など医療従事者におかれましては、副作用等が発生した場合、また、そのことについて相談を受けた場合、その健康被害が本制度の救済の対象になると思われたときには、本制度を紹介していただくとともに、請求に必要な診断書等の作成につき、引き続き格段の御協力をお願いします。


救済制度のご案内

加温加湿器の併用による人工鼻の閉塞について
 続いて、同じく第251号から、「加温加湿器の併用による人工鼻の閉塞について」を紹介いたします。
 財団法人日本医療機能評価機構によるヒヤリ・ハット事例収集等事業において、人工鼻と加温加湿器を併用していた事例が報告されました。
 「人工鼻」(人工呼吸器に接続できない気管切開患者用人工鼻を除きます。)は患者の呼気の熱と水分を捕捉し、これらを利用して吸気ガスを加温及び加湿する器具です。他方、「加温加湿器」は人工呼吸器等から送られる患者回路内のガスを加温加湿する装置です。これら人工鼻と加温加湿器を併用した場合、人工鼻の過度の吸湿による流量抵抗の増加や、人工鼻の閉塞の危険性があり、人工呼吸器等の低圧アラーム値の設定によっては、回路の外れやリークが生じても低圧アラームが作動しなくなるおそれがあります。
 このため、これらの医療機器の添付文書を調査した結果、一部の人工鼻及び加温加湿器の添付文書において、互いの製品を併用禁忌とする記載等がないもの、又は併用による閉塞のリスク等が明記されていないものが認められました。
 以上のようなことから、当該医療機器等を取り扱う製造販売業者に対し、添付文書の自主点検を行い、自主点検の結果に応じて添付文書の改訂を行うとともに、医療機関への情報提供等により注意喚起を実施するよう通知が発出されております。
 添付文書の内容については、「人工鼻、又は人工鼻を一部構成品とする人工呼吸器若しくは麻酔器等」の、「併用禁忌欄」に「加温加湿器」を記載するとともに、その併用禁忌の理由として「加温加湿器を併用した場合、人工鼻のフィルタが閉塞し、換気が困難となるおそれがある。」旨を記載する、
 また、「加温加湿器,又は加温加湿器の加湿チャンバを一部構成品とする人工呼吸器若しくは麻酔器等」の、「併用禁忌欄」に「人工鼻」を記載するとともに、その併用禁忌の理由として「人工鼻のフィルタは、加温加湿器との併用により閉塞し、換気が困難となるおそれがある。」旨を記載する、となっております。
 医療関係者におかれましては、使用する医療機器の添付文書を熟読の上、各医療機器の正しい使用方法を確認してください。


人工鼻

酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症について
 続いて、第252号から、「酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症について」を紹介いたします。
 酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症については、添付文書の「副作用」の項に「高マグネシウム血症」を記載し、注意喚起を図ってきたところですが、今般、当該副作用報告を整理・調査した結果,本剤を長期投与する場合には、定期的に血清マグネシウム濃度を測定するなど、「高マグネシウム血症」について更なる注意喚起を図る必要があるとされました。
 高マグネシウム血症の発現状況等についてですが、酸化マグネシウムは、昭和25年から便秘薬や制酸剤などとして広く使用されており、関係企業が推計したおおよその年間使用者数は平成17年で約4,500万人です。
 平成17年4月から平成20年8月までに報告された酸化マグネシウムの服用と因果関係が否定できない高マグネシウム血症15例(そのうち、死亡2例)について、専門家による検討を行った結果、統合失調症や認知症を合併している患者などに対して、漫然と長期投与されていたと考えられる症例及び高マグネシウム血症による症状と気づかないまま重篤な転帰に至った症例が認められたことから、関係企業に対し、添付文書の使用上の注意に次のように記載するよう指示が出されました。
 具体的には[重要な基本的注意]の項に、「本剤の投与により、高マグネシウム血症があらわれることがあるので、長期投与する場合には定期的に血清マグネシウム濃度を測定するなど特に注意すること」と記載するとともに、
[副作用(重大な副作用)]の項に、「高マグネシウム血症:本剤の投与により、高マグネシウム血症があらわれ、呼吸抑制、意識障害、不整脈、心停止に至ることがある。悪心・嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、皮膚潮紅、筋力低下、傾眠等の症状の発現に注意するとともに、血清マグネシウム濃度の測定を行うなど十分な観察を行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと」と記載するよう指示しております。
 医療関係者におかれては、酸化マグネシウムの投与中においては、高マグネシウム血症の初期症状に十分注意するとともに、特に長期投与する場合には、定期的に血清マグネシウム濃度を測定するなど、異常が認められた場合に適切な処置がとれるよう更なる注意をお願いします。

 以上で「医薬品・医療機器等安全性情報」の第251号及び第252号に掲載された主な内容に関する紹介を終わります。なお、本日紹介いたしました内容については、厚生労働省ホームページ、または医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページからもご覧頂けます。
それでは、本日の「薬学の時間」を終了いたします。ありがとうございました。


学薬アワー「空気検査について」
2008/12/25(木) 00:00

薬学の時間
2008年12月25日放送分
学薬アワー「空気検査について」
日本学校薬剤師会広報出版委員会委員
西村 友男

教室の空気環境については換気がポイント 
 1日の大半を学校で生活する児童生徒にとって、教室内の空気環境は快適でかつ清浄でなければなりません。教室の温熱条件および空気清浄度の良し悪しは、教室で生活する児童生徒の健康維持増進はもとより、学習意欲にも影響を与えるからです。
 教室内の温熱等物理的な条件とアレルギーや化学物質過敏症の原因となる化学物質の発生の対策には、教室内空気の温熱条件の検査とともに換気の指標としての二酸化炭素濃度の動きに常に関心を持つ必要があります。そして化学物質の濃度の低減化を図るため、適切な換気を行うことが重要です。


 教室等の空気は、学校環境衛生の基準が定められています。
 定期環境衛生検査の検査内容としては、
①温熱および空気清浄度と換気です。これは毎学年2回行われます。
②ホルムアルデヒドおよび揮発性有機化合物と、ダニおよびダニアレルゲンは、毎学年1回行うことが望ましいといわれています。
 検査事項としては、温熱および空気清浄度としては、自然環境の教室では、温度、相対湿度、二酸化炭素濃度の3項目の検査は必須です。冷暖房を行っている人工環境の教室では、温度、相対湿度、二酸化炭素の3項目に、気流、一酸化炭素、二酸化窒素、浮遊粉塵、落下細菌、実効輻射温度を含めて9項目です。
 平成17年度の学校保健調査報告から、実施率は、温度84.6%、相対湿度50.6%、二酸化炭素81.8%、換気40.7%と、相対湿度と換気が低い実施率でした。このことから、今回は、温熱および空気清浄度の必須3項目、すなわち温度、相対湿度、二酸化炭素濃度と換気についてお話しいたします。
 判定基準と検査結果の事後措置としては、まず温度は、冬期では10℃以上、夏期では30℃以下であることが望ましく、また最も望ましい温度は、冬期では18~20℃、夏期では25~28℃であることとされています。温度が10℃以下で継続する場合には、採暖できるようにすることが必要です。
 相対湿度は30~80%であることが望ましいとされています。相対湿度が30%未満の場合には、適当な調節を行うようにする、すなわち加湿が必要となってきます。参考までにビル管の基準値は40~70%です。
 教室の温度は、快適性に直接影響を与えるので、児童生徒等に生理的、心理的に負担をかけない無感状態での学習に望ましい条件です。日本の気候の特徴として夏は高湿、冬は低湿ということをふまえ、教室内の相対湿度は30~80%の維持が良いとされています。しかし、人体の快適性からいえば50~60%範囲が最も望ましいといわれています。
 次に二酸化炭素です。二酸化炭素の基準値は、人体に対する直接的な健康影響から定めたものではありません。教室内では、在室する児童生徒等の呼吸気量によって、教室の二酸化炭素の量も増加し、空気の外気との入れ換え(換気)がなければ同時に他の汚染物質も増加するであろうという考え方から定められています。そのため、教室では、二酸化炭素の発生量から、換気の基準として1500ppm以下であることが望ましいとされています。もし二酸化炭素の濃度が1500ppmを超えた場合は、換気の強化を行うようにする必要があります。参考までにビル管の基準値では1000ppm以下です。
 そして換気です。
 換気回数は、1教室40人が在室し、教室の容積が180㎥の場合、幼稚園・小学校においては2.2回/時以上、中学校においては3.2回/時以上、高等学校においては4.4回/時以上であります。教室の空気の温熱や空気清浄を保持するためには、外気と教室内の空気を常に入れ換える必要があります。
「教室等の空気」の検査項目のなかでも二酸化炭素濃度の基準内の維持は重要であります。換気の指標として換気回数を定めています。学校では児童生徒等の呼気からの二酸化炭素の発生量に注目し換気回数を定めているので、授業中にも換気をしないと基準値は達成されません。
 規定の換気回数に達しない場合は、窓の開閉、欄間換気や全熱交換器付き換気扇等を考慮しなければなりません。
 二酸化炭素濃度と換気回数の関係については、40人の児童生徒に1人の教師がいた場合、外気、初期の二酸化炭素濃度400ppmとすると、
①幼稚園、小学校(低学年)の教室では、始業25分で、基準値の1500ppmを超え、授業終了時には2500ppmとなります。換気回数が2.2回だと、授業終了時に1400ppmと基準値以下になります。
②中学校の教室では、始業17~18分で、基準値の1500ppmを超えます。授業修了時には3500ppmです。換気回数が3.2回だと、授業終了時に1400ppmとなり基準値をクリアします。
③高等学校の教室では、始業10分足らずで基準値の1500ppmを超え、授業終了時には4000ppmを超えています。換気回数4.4回で、基準値以下になります。
 現に私も、4~5年前の1月に、高等学校において5時限目に空気検査をしたことがあります。教室に入ると、ムワーとして、暑苦しく、息苦しい経験がありました。そのときの温度は28℃、湿度は30%、二酸化炭素は4000ppmを超えていました。
 上手な換気の仕方については、休み時間には、窓、戸は開けるだけでなく、授業中、教室の「風の通り道をつくる」、すなわち空気の入口と出口を作る必要があります。教室の窓側と廊下側に、窓、戸を少し開けます。
 日常における環境衛生(日常点検)も必要です。
①外部から教室に入ったとき、不快な刺激や臭気がないこと。
②欄間や窓の開放等により換気が適切に行われていること。
③教室温度が基準内、冬期で18~20℃、夏期で25~28℃であることが望ましく、もし10℃以下が継続する場合は採暖等の措置が望ましい。

環境基準を守ることでインフルエンザを予防し学習効果を上げる
 それでは、なぜ基準を守る必要があるのか例をあげますと、一つには、温度・湿度、換気の環境面から、インフルエンザの予防対策にもなります。Harperらの研究論文があります。
 インフルエンザウイルスを浮遊させた実験装置を、装置内の温度を①7~8℃、②21~24℃、③32℃の3段階にし、それぞれ湿度を、20%、50%にした時の、6時間後のインフルエンザウイルスの生存率を調べました。
 21~24℃のとき、湿度20%では60%のウイルスが生存するのに対して、湿度50%では、ウイルスの生存率は3~5%に減少しました。
 7~8℃の低温のときは、湿度20%では生存率は63%であり、50%にすると生存率は35~42%でした。
 32℃という高温にすると、湿度20%では生存率は17%であり、50%においては、生存率は0でした。
 温度が低いほど、湿度が低いほど、インフルエンザウイルスの生存率が高まります。また鼻、喉、気管などにある粘膜の繊毛の働きが弱まりますので、ウイルスによる感染が起こりやすくなります。換気することにより、教室内に浮遊しているウイルスなどを除去できます。
 次に、教室内の環境(温度、換気)の良し悪しが学習効果に及ぼす影響について、お話しします。村上らは、教室の温熱・空気環境の質が学習効率に及ぼす影響を検討しています。一級建築士を目指す学生を被験者にして、教室内の換気量を増加させること、すなわち教室内の二酸化炭素濃度を基準内に保つことにより、テストの平均点が5~9%向上し、また被験者の申告による学習効果も2~7%向上したと報告しています。
 また、換気量が少ない環境条件では、温熱環境が影響して学習意欲を低下させる割合が高いことも指摘されています。
 このように、温熱・空気環境の良し悪しが学習意欲に大きな影響を与えていることがわかってきています。
 1教室内には、30~40人の児童生徒等がいます。成長段階にある子供達です。同じ年齢であってもその成長は個人個人によって異なっています。その子供達は、教室の環境が悪くても、授業に出席しなければなりません。また子供達が学校で習うことは常に新しいものです。
 以上のことから、教室の空気環境は、学校基準では「~と望ましい」と表現されていますが、基準内であれば良いと考えず、児童生徒等の健康保持増進、学習意欲向上のために、より良い教室環境になるように、学校薬剤師は、常に、指導助言をするように心がけなければなりません。


厚生労働省アワー「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会報告書について」
2008/12/23(火) 00:00

薬学の時間
2008年12月23日放送分
厚生労働省アワー「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会報告書について」
厚生労働省医薬食品局審査管理課
髙梨 文人

はじめに
 厚生労働省医薬食品局審査管理課の髙梨文人と申します。本日は、昨年の7月にまとめられました「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」の検討結果報告について説明いたします。この検討会は、厚生労働大臣の下に設置され、平成18年10月から平成19年7月まで計9回にわたり開催されました。
 


 開催の背景について説明します。科学技術の進歩の成果として、国民のより健康な生活に資する新しい医薬品が開発されることが期待されているとともに、日本においては、欧米と比べて医薬品が市場に出るまでの期間が長期化する「ドラッグラグ」が存在するとして指摘されるなど、欧米諸国で使用されながら国内では未承認の医薬品があります。このように、新しく生まれる、又は海外で既に使われている医薬品を国内で速やかに使用できるような体制をつくることが求められておりました。その一方として、医薬品の安全性に関する社会的な関心は非常に高く、迅速に新薬を供給することと同時に、その安全性を確保することも求められていました。この様な状況を踏まえ、厚生労働省においては、本検討会において、より有効な医薬品を、安全性を確保しつつ、より迅速に国民に提供するための方策について検討することといたしました。その結果まとめられましたのが本報告書です。

医薬品の開発から承認まで
 まず、医薬品が開発されて市場に出るまでの過程について説明します。始めに基礎研究において候補となる化学物質が作成され、それが動物試験等の非臨床試験において検討され、そしてヒトを対象とした臨床試験において疾患に対する有効性、副作用、最適な使い方等が検証されるという開発の経過を経ます。それぞれの試験の方法、注意事項については、日米欧医薬品規制調和国際会議(ICH)の活動により、国際的な整合性がとられています。しかしながら、ICHのガイドラインでも民族的要因の評価の必要性を指摘されているとおり、民族間の遺伝子などによる内因的な体質の違い、及び生活習慣などによる外因的な体質の違いが、医薬品の臨床での効果や安全性に影響があることから、医薬品の用法・用量や副作用の発現については、日本人と欧米人で異なることがあります。そのため日本では、現在、国内において一定の治験を実施して有効性、安全性を検証することを基本としています。医薬品を開発する製薬企業は、必要な試験を国が定めた基準を満たすよう実施し、その結果に基づき承認申請します。国は、それを審査及び調査するとともに、その時点における医学的、薬学的知見に基づき、当該医薬品の治療上の効能・効果と副作用とを比較考量して、承認の可否を判断しています。
 以上の医薬品の開発から承認までの期間ですが、日本製薬工業会の調べによりますと、9年から17年かかるとされています。この期間が日本では海外に比べて長期間かかると言われており、実際、2004年の世界売り上げ上位の医薬品88品目で比較しますと、その製品が世界で初めて上市されてから、それぞれの国で上市されるまでの期間に、日本は米国よりも、約2.5年の遅れがありました。この遅れは、治験の着手までの期間、治験の実施期間、審査期間の3つにおける国内外の差に由来すると分析され、それぞれの期間の短縮のための具体的方策が検討されることとなりました。以下それぞれについて述べます。

開発と承認審査の迅速化について
 はじめに、製薬企業の治験の着手を早めるための方策についてです。その手段としては、新しい技術の活用が挙げられました。科学技術の進歩により、マイクロドージングといわれる微量の医薬品をヒトに投与して開発早期に薬物動態を調べる探索的臨床試験や、代替のエンドポイントとなることで有効性の評価を簡便にするバイオマーカー等、新しい医薬品の評価手法が考案されていますが、有効活用されていないという指摘があります。これらの新技術により医薬品候補物質の評価が効率化されることが期待されており、製薬企業が積極的に活用するとともに、行政からその実施方法や留意点などに係るガイダンスを示すことが求められています。このことは、ヒトの細胞や組織を利用した再生医療という新しい分野の製品についても言えます。細胞、組織が自己由来かどうか、どのような加工工程を経るか、品質は保たれるか等について製品ごとにリスクが異なり、それぞれのリスクを踏まえた薬事規制を整備することで、開発の筋道を立てやすくなることが期待されています。このほか、小児用医薬品、小児の用法・用量を開発するための治験についても、早期に着手されるようにその促進が求められました。
 次は、治験の実施期間を短縮することについてです。方策として有望視されましたのが、国際共同治験です。これは、世界で新しく開発された医薬品について、同一の試験計画に基づき、世界各国で同時並行的に治験を実施する手法です。各国で同時に行った治験結果を複合して解析することで、それぞれの国で別々に情報を集める場合よりも、有効性の証明に必要な患者数を少なくかつ短期間で確保することができます。この国際共同治験に日本も参加し、その結果を基に承認申請することで、海外と同時進行で医薬品の開発が可能になると期待されています。国際共同治験においては、異なる民族において得られた結果を統合することとなりますが、東アジアの各国との間では民族差が小さいことが一般的に考えられ、その比較研究が求められています。このほか、臨床試験の実施基準であるGCPについては、本報告書とは別に「治験の在り方検討会報告書」でまとめられておりますが、信頼性を保った上での円滑な運用が求められています。
 そして、承認申請がされてから、承認の可否が決定されるまでにある、承認審査の期間の短縮化についてです。一つの方策として、承認審査の基準を予め示し、開発と承認申請資料の作成を進めやすくすることが挙げられました。次に、実際に医薬品の審査に当たる組織である独立行政法人医薬品医療機器総合機構についてですが、審査員の人員を確保し、研修や人事交流等により審査能力を高めることで、柔軟かつ効率的な審査体制を構築することが求められました。
 以上が、医薬品の開発から承認までの期間を現在よりも短期化するための方策になります。

安全対策について
 本検討会では、新しい医薬品の迅速な提供だけでなく、一層の安全確保についても検討されています。臨床試験で医薬品が投与される患者の数は限られており、通例、500例から1000例であることが多く、この例数では、頻度が低い副作用は統計学的には検出されなくなります。その一方、治験に組み入れる例数を増やすと、それに伴い開発にかかる時間が長期化します。医薬品の開発の迅速化と安全性の確保をともに求めるために、安全性確保の方策について提言されました。
 市販後安全対策に係りまして、現在日本では、市販後6ヶ月間の集中的な情報提供、副作用情報の収集を目的とした市販直後調査や、新有効成分では承認から原則8年後に有効性・安全性を見直す再審査制度などが行われています。それぞれについてさらに実効性を高めるよう、期間を一律に設定するのではなく、個々の医薬品の投与期間、起こりうる副作用等の特徴に合わせた臨機応変な対策が求められています。そのほか、医薬品添付文書を理解しやすくするための改善や、医療関係者に対する添付文書の重要性の周知徹底、患者向け情報提供、市販後の医薬品情報の収集体制の強化について述べられています。

未承認薬について
 本検討会においては、未承認薬の使用についても話し合われました。新薬を使用するためには、原則としては国内で必要な治験を実施し、科学的に検証して承認することが必要とされましたが、一方では、重篤な疾患で代替治療法がない場合などにおいては、先の原則を阻害しない範囲で未承認薬を使用する制度の導入に向けて検討すべきと提言されました。その導入に向けた方策に加え、医薬品の個人輸入の取り扱いについても併せて述べられています。

おわりに 
 以上で説明を終わりますが、厚生労働省においては、今後の周辺環境の変化を踏まえつつ、本報告書の提言を今後の薬事行政に役立てていくことが求められております。なお、本検討会の報告書、議事録、資料等につきましては、厚生労働省のホームページに掲載されております(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/07/s0730-10.html)ので、詳細につきましてはそちらを御覧下さい。


日薬アワー「FAPA報告」
2008/12/18(木) 00:00

薬学の時間
2008年12月18日放送分
日薬アワー「FAPA報告」
日本薬剤師会副会長
山本 信夫

テーマは「ヘルスケアの質を上げるアプローチ」
 今日は今年11月7日から10日までシンガポールで開催されました、第21回FAPA、アジア薬剤師会連合の会議の模様についてご報告します。FAPAにつきましては2年に一度開催されます。一昨年、日本の横浜で開かれた後、2年後の今年が第22回のシンガポール大会ということになります。会期は冒頭申し上げたとおり11月7日から10日の4日間、場所はシンガポールのシンガポール市で開かれました。今年のテーマは「Translational Research:The Approach to Quality Healthcare」でしたが、なかなかTranslational Researchという言葉が訳しにくいという気がします。日本語でもあちらこちらでいわれていますが、日本語にせずに英語のままTranslational Researchという言葉を使っていますが、言葉にしにくいので、要は「患者のヘルスケアの質を上げるためのアプローチについてどうとらえるか」というテーマというふうにとらえていただければよろしいと思います。会期は7日から10日ですが、10日はほとんどがフィールド・トリップといって地域の薬局あるいは病院の見学にあてられましたので、7日の開会式に始まって、9日の夕方のセッションまでということになります。


 開会式はいつも決まっているのですが、その国の特徴あるテーマが出されます。今年はシンガポールというとITの国ですので、開会式の半ばにハエをイメージしたリモートコントロールの、蝶ともいえないハエともいえないものが飛び回るということで、会場の雰囲気を盛り上げていました。最も感銘を受けたのは、最初の開会式に披露された子供たちのダンスであります。シンガポールという国はかなり新しい国ですので、あまり人々の間では格差感がないわけでありますが、今回のダンスに出た子供たちは多少障害を持った子供たちで、なかなかダンスも一所懸命やっていますけれど、なかにはみなさんが右へ行くのに左へ行ってしまうという子供も何人かいました。そうしたことにみなさん嫌な顔をせず、拍手を送ってそのダンスが終わるまで見ているというたいへん心温まる演出でありました。その後、実際のセレモニーに移るわけですけれども、シンガポールの会長、女性であります、二代続いてシンガポールの薬剤師会の会長は女性が就いておりますが、Fatimahという方が開会のあいさつを述べられ、さらにSoo Ja Namというこの方も女性でありますが、FAPAの会長のあいさつがあって、さらに組織委員会のCamilla Wongという方も女性でありまして、今回は女性が極めて表に出る会議でありました。
 厚生大臣のあいさつの後、具体的には会議が始まるわけですが、まず石館賞、日本の石館守三先生の功績を残した賞が毎回5人の方に、開局・病院薬局・製薬・教育・薬学研究という分野で授与されるわけですけが、今年もフィリピン・シンガポール・タイ・フィリピン・韓国の方がそれぞれ受賞されました。たいへん権威ある賞で、今回は残念ながら日本からの受賞はなかったわけですが、それぞれ功績のあった方々が受賞されています。
 そのあと基調講演として、Joseph Bertinoというアメリカの方ですが、「Translational Research for Better Patient Outcome and Safety」というテーマで、新薬開発に関する段階から化合物を合成する過程、新たにその安全性を保障してというようなことを、段階を追ってTranslationalな研究が必要だということを述べられました。実は少し注文をつければ、少し難しすぎてなかなか開局者には理解がしにくいところがあったという感じがしました。
 一方、二日目からですが、シンポジウムあるいはフォーラム、特別なセミナーがそれぞれ組まれていまして、冒頭の開会式と同様にシンガポールという国のあり方なのでしょう、極めて効率的に、しかもシステマチックに無駄なく進むという意味では、日本の会議は私ども主催をしましたので十分に効果があったと考えていますけれど、それと同じくらいにたいへん効果的に進められていました。会場はもちろんそうした会議場を使ったのではなくてホテルの一角を使っているので多少使いにくさはありましたが、それにしてもそれをうまく使った構成だったと思います。
 シンポジウムA、B、Cにつきましては、今回のテーマが患者のQuality Healthcareということですので、そうしたものを中心にすえながら、しかもTranslational Researchということもありますので、科学との関係も考えつつ、患者中心の革新的な医薬品の開発あるいは患者のための医療費、あるいは安全性あるいは利便性といったようなもの、それから科学の基礎研究の実務への反映という極めてシンボリックなテーマでありました。

3カ国増えアジア全体をカバーする会になった
 一方、特別セミナーでは薬物動態の話、最近のテーマでありますが、そうしたものが取り上げられてさらにフォーラム1、2、3は、医薬品の監査制度、Pharmacovigilance、あるいは薬物治療の効果を上げるための禁煙、これは世界的な潮流であります。もう一方では在宅ケアのなかでの薬剤師の役割ということで、なかなかPharmacovigilanceにつきましては日本の薬剤師、たいへん極めて厳密な制度を日本が持っていますので、そのなかではあまり気にすることはないのですが、アジア的にはたいへん大きな問題であります。あとの二つのテーマは日本でも薬剤師が積極的に取り組んでいるというテーマでありまして、その部分についてのフォーラムがありました。
 シンポジウムについては、愛知学院大学の川島先生が講師で出られましたし、フォーラム1のPharmacovigilanceには日本の医薬品医療危機総合機構から松田さんと佐藤さんのお二人の方がたいへんわかりやすい発表をされて、日本のPharmacovigilanceに関する報告をされていました。
 口頭発表が35題、ポスターが249題とたいへん多く、そのなかでも台湾のポスターの68題というのが突出しております。といいますのも、次回2010年の開催地が台湾ということで、力の入れようにつきましても極めて突出しておりました。
 最終日にはFAPA Gala Dinnerが開催されました。こちらのほうはいろいろな出し物があるのですが、実は公式アナウンスの開会時間が18時、18時30分、19時と三つあって、一体どれが本当なのだろうなという参加者にとっては多少混乱しましたけれど、そのあたりはFAPAのよさでありまして、18時に集まる人、18時30分に集まる人、19時に集まる人、それぞれ早く集まっても遅く集まっても文句を言わずにみんなにこにこ、和気あいあいの式典でした。
 最終日の公式の閉会式での組織委員長からの発表では会の総括が行われ、全体の三日間のオーバービューがビデオテープで流されるなどしたわけですが、事前の登録が1,090人ということで、前回は1,300人を超えましたので少し小さめでありましたが、かなり盛会な会であっただろうと思います。そのなかでもタイから250人、韓国から126人、台湾100人、フィリピン81人、インドネシア42人、日本は残念ながら39名の参加しかありませんでしたが、それでもたいへん成功裏に終わった会であったと思います。
 今回報告すべきことは、いままで13の加盟国がFAPAのなかではあったわけですが、今年から新たにカンボジア、ネパール、モンゴルが参加し、トータルで16の加盟国からなるアジア全体をカバーする大きな会になってきました。アジア地域はWHOの地域でいえばアジアと西太平洋と分かれていますが、その両方をカバーするたいへん大きな団体になったというふうに認識しています。再来年の台湾での会議のために旗がFatimah会長から次回開催国であります台湾の薬剤師会会長Dr. Hongに渡されまして、さらに2010年には国内から500人、国外からは700人というようなことも含めて、たいへん大きな会になるということも伝えられましたし、今回加盟しましたカンボジア、ネパール、モンゴルは経済的に決して豊かな国ではありませんから、そうした国からも参加がしやすいように、できれば渡航費の支援も考えてみたいというお話が台湾のほうからありました。そうしたことがあって、次回の2010年の会議はとても楽しみな会議であります。
 FAPAの特徴ですが、公式行事が終わってDinnerの最後にはみんなでそれぞれ参加した国々が歌を歌ったり、出し物をするというイベントがあります。毎回、各国の民族衣装を着たり、あるいはそれなりの格好をして行われます。日本ではいつものとおり日本薬剤師会副会長の生出先生を先頭に歌を歌って国威発揚にいそしんだということであります。先ほど申しましたように、次の2010年は台湾で開かれます。その先の2012年につきましてはインドネシアのバリ島で開かれますので、みなさんたくさん参加していただきたいと思います。


薬学の時間 2009年1月 テーマ・出演者 一覧 [番組表]
2008/12/17(水) 19:00

放送日:2009年1月1日
テーマ:年頭所感
出演者:日本薬剤師会会長 児玉 孝

放送日:2009年1月6日
テーマ:痛みのない心筋梗塞
出演者:国立国際医療センター循環器科医長 樫田 光夫

放送日:2009年1月8日
テーマ:がん情報のネットワーク
出演者:国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部室長 高山 智子

放送日:2009年1月13日
テーマ:冬の熱と咳からみた診療のポイント
出演者:石心会狭山病院副院長 青島 正大

放送日:2009年1月15日
テーマ:患者の話を聞く技術―確認型応答について
出演者:対話法研究所所長 浅野 良雄

放送日:2009年1月20日
テーマ:小児の発熱の特徴と注意点
出演者:国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部室長 阿部 淳

放送日:2009年1月22日
テーマ:学薬アワー「学校薬剤師の地域活動について」
出演者:日本学校薬剤師会副会長 中野 信利

放送日:2009年1月27日
テーマ:日薬アワー「今年の展望」
出演者:日本薬剤師会専務理事 石井 甲一

放送日:2009年1月29日
テーマ:厚生労働省アワー「外国製造業者の認定制度について」
出演者:厚生労働省医薬食品局審査管理課 貝原 知佳


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