日薬アワー「今年の展望」 [日薬アワー] [薬学の時間]
2009/01/27(火) 00:00

薬学の時間
2009年1月27日放送分
日薬アワー「今年の展望」
日本薬剤師会専務理事
石井 甲一

医療費増加の抑制
 日本薬剤師会専務理事の石井です。本日は日本薬剤師会における今年の展望ということで、主な課題ごとにお話をさせていただきます。
 ここ数年、政府は厳しい財政状況の中で、高齢化などによる医療費を含む社会保障費の伸びを計画的に抑制する政策をとってきています。具体的には平成19年度から平成23年度までの5年間で、毎年2,200億円、トータル1兆1,000億円の社会保障費の伸びを縮減するというものです。来年度は3年目に当たり、昨年7月に財務省から示された平成21年度予算の要求上限、これをシーリングといいますが、社会保障費の自然増は8,700億円と見込まれているが、そのうち2,200億円を削減し、6,500億円の増加しか認めないという内容でした。


 日本薬剤師会は、医師会、歯科医師会とともに「国民運動」を展開するなど、これ以上の医療費抑制に対して反対活動を展開しました。高齢化に伴う医療費の増加は当然の流れであり、この伸びを一律に毎年抑制しようという施策は撤回すべきである、との趣旨で反対活動を行ってきました。
 幸いにも、12月に決定した来年度政府予算案では、社会保障費の縮減は、後発医薬品の使用促進による約230億円のみとなりました。社会保障費全体の縮減は軽減されましたが、後発医薬品の使用促進を期待されている薬局・薬剤師にとっては、引き続き先発薬からジェネリック薬への転換努力を行うことがこれまで以上に求められることになります。
 このような来年度予算案の中で、介護報酬の改定が行われ、4月より実施されることになりました。3.0%の引き上げということが決まりました。薬剤師による居宅療養管理指導については、関係職種への必要な報告と情報提供を行った場合、という条件が付きましたが、単位については調剤報酬との整合性をとることができ、2回目以降の訪問の場合にも初回と同様に500単位を算定することになりました。一方、居住系施設入居者の場合は1回につき350単位となります。

医薬品販売制度の改正
 次に新たな一般用医薬品の販売制度への対応です。平成18年6月に薬事法が改正され、段階的に適用されてきましたが、いよいよ今年の6月1日から全面施行となります。販売制度の改正は、医薬品を一般小売店で販売できるようにせよとの長年にわたる強力な規制緩和要求に対応するものと捉えられています。新たな販売制度において薬剤師に求められる事項を確実に実行に移すことが、薬剤師の職能を国民の皆さんの目に焼き付けることになり、結果として規制緩和要求が二度と起こらないようになるものと期待されています。
 新たな販売制度について簡単に説明します。まず一般用医薬品がリスクの程度により3つに分類されました。最もリスクの高い第一類医薬品は薬剤師が必ず書面を用いて用法や効能、使用上の注意などの情報を提供することが義務付けられました。つまり薬剤師以外は扱うことができない医薬品ということになります。第二類医薬品については、登録販売者も扱うことができますが、情報提供については努力義務となっています。第三類医薬品については情報提供は求められません。一方、すべての医薬品について相談があった場合には応需することが義務付けられます。一般用医薬品、特に第一類医薬品の販売に当たって、情報提供や相談応需が義務付けられますので、薬局においては、薬局製剤の販売や調剤した薬剤の交付に当たって、第一類と同様に情報提供と相談応需が義務行為となりますので注意が必要です。
 この他には、陳列に当たってはリスク区分毎に陳列すること、第一類医薬品は消費者の手の届かない場所に陳列すること、第二類医薬品の中でもより注意が必要な指定第二類医薬品は、薬剤師の目の届く範囲、具体的には情報提供場所から7メートル以内の場所に陳列することが求められます。陳列や情報提供の場所などに関連して、薬局等構造設備規則が改正されます。
 一方、薬剤師の配置数を決めている省令が全面改正され、「業務を行う体制を定める省令」となり、一般用医薬品を販売する時間や薬剤師や登録販売者の従事すべき人数など、販売業務の体制について細かく規定されることになります。
 既存の薬局については経過措置がとられます。掲示に関する部分、構造設備規則の改正部分、新たに定められる業務体制に関する省令に関する部分については、平成24年5月31日までの経過期間が認められることになっています。
 今回の改正は、医薬品の購入者や使用者が適正に医薬品を使用してもらえるよう、薬の専門家である薬剤師が、既に実施していること、あるいは実施すべきであった事項を事細かに文書化したものであると受け止めていただきたいと思います。
 医薬品の新たな販売制度の実施に向けての動きの中で、昨年の夏以降、インターネットによる医薬品の販売について大きな議論が行われました。規制改革会議がこの問題を取り上げました。これまでの厚生労働省の検討会における議論では、医薬品は対面販売が原則であり、インターネットを活用するような販売形態はリスクがごく少ない医薬品に限定すべきであるとの意見が多数であり、公表されている省令の改正案においても第三類に限定することとされていました。しかしネット業者等がこれに反対し、規制改革会議も同調しました。反対活動により年末に規制改革会議がまとめた第三次答申には取り上げられませんでしたが、今後とも議論が継続するものと思われます。日本薬剤師会は、対面販売の原則を掲げ、インターネット販売の対象薬を拡大することに強く反対しています。

薬学教育6年制の実務実習
 次に薬学6年制への対応です。6年制の薬学生は今年の4月から4年生になり、来年からいよいよ長期の実務実習が始まります。付属の実習施設を持たない薬科大学の実習生を受け入れるのは、一般の薬局や病院ということになります。また、実習を指導する薬剤師も教育に関して一定の知識と技術を習得した者である必要があります。全国的にばらつきのない実習が実施されるためには厚生労働省、文部科学省との連携の下で、国の事業として指導薬剤師の養成を行う必要があるという考え方で、平成17年度から国の予算により指導者の養成事業が行われてきました。
 日本薬剤師会においては都道府県薬剤師会と協調しながら、薬剤師研修センターを中心として薬局・薬剤師の指導者養成に計画的に取り組んできました。その結果、本年度までに約8,300人がワークショップに参加することになります。当初の計画では平成21年度末までに7,000人の養成としていましたので、1年前倒しで達成できることとなりました。また、指導者の養成のための政府予算は本年度で終了の予定でしたが、薬科大学の新設により薬学生の数が当初予想より増加していることから、来年度も予算が付くこととなっています。
 実務実習について薬科大学は、今年の6月末までに実習場所を文部科学省に提出しなければなりません。現在、実務実習地区調整機構が間に立って学生と薬局のマッチング作業が行われています。
 また薬科大学では、学生を長期実務実習に出す前提として共用試験という試験を行うことにしており、本年末から来年3月にかけて2種類の共用試験を実施することになります。実務実習がスムーズにスタートできるよう期待しています。

調剤報酬改定
 さて来年4月には調剤報酬改定が予定されています。そのための議論が中医協を中心として今年の秋頃から激しくなると思われます。冒頭で申し上げましたが、政府は財政状況が厳しいことを理由として、長年医療費の抑制を求めてきました。来年度の予算案では何とか大きな削減は回避されましたが、抑制の方針は撤回されておらず、再来年度の予算に組み込まれることになる次回の調剤報酬改定も楽観視できない状況です。一方で後発医薬品の使用促進が求められており、そのため処方せんを受け取る側の薬局経営にも影響することとなることから、何としても引き上げ改定になるよう努力したいと考えています。

薬剤師の将来ビジョンの策定
 次に、薬剤師の将来ビジョンの策定についてです。昨年から日本薬剤師会の職種部会を中心として「薬剤師の将来ビジョン」の策定のための作業が行われています。薬局・病院・製薬企業など各職域におけるこれまでの薬剤師の業務の変遷を整理し、外国の薬剤師の業務をも参考にしながら、将来の薬剤師の姿を描いてみようというものです。本年秋に中間的なビジョンをまとめる予定にしています。

スポーツファーマシスト制度
 その他、新しい取り組みとして「認定スポーツファーマシスト制度」が始まります。スポーツファーマシスト制度は、日本アンチ・ドーピング機構が制定するもので、その運用に当たって薬剤師会が全面的に協力するという制度です。2種類の講習会を受講し、試験に合格した薬剤師をスポーツファーマシストとして認定し、ドーピング防止に関する活動を行ってもらうことになります。選手やスポーツ愛好家、学生などに対してドーピングの問題点や薬物・薬剤の適正使用などについての啓発活動を行うことが期待されます。今年の春に応募要綱が公表され、来年の春にはスポーツファーマシストが誕生します。多くの薬剤師がスポーツファーマシストになっていただき、新たな薬剤師の職能として活躍する場面ができるのではないでしょうか。
 以上、本日は今年の展望についてお話ししました。