持続血糖モニターからみた治療薬の効果(前編) [薬学の時間2018] [薬学の時間]
2018/11/09(金) 14:00
薬学の時間
2018年11月8日放送
持続血糖モニターからみた治療薬の効果(前編)
東京慈恵会医科大学 内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科 教授
西村 理明


 本日は、連続的に血糖変動をモニターできる持続血糖モニター CGMについて、次回は、CGMの知見を含めた、糖尿病の薬物療法、特に内服療法の実際についてお話ししたいと思います。

 糖尿病治療において重要なのは血糖値を適切にコントロールすることです。その際に用いられる、血糖コントロール指標の代表がヘモグロビンエーワンシーです。

 ヘモグロビンエーワンシーというのは過去2から3ヶ月の血糖値の平均を示す指標です。従って、この指標は、糖尿病患者さんで頻繁におこる、おもに食後を中心とした血糖値の上下の変動を反映しません。この血糖変動を把握するため、血糖値を測る手段として一般的に普及しているのは血糖自己測定、通称SMBG、です。

 SMBGは、具体的には、穿刺具で指先などをさして、少量の血液を出し、測定用のチップに血液をつけて測定します。通常1日に1回から4回行います。SMBGでは測定した時点の血糖値を知ることができますが、その測定した時点と時点の間の血糖変動がどうなっているかを、推測することがとても難しいという問題がありました。

 この問題を解決するために 持続血糖モニターが開発されました。持続血糖モニターはcontinuous glucose monitoringの略で、本日は以下CGMと呼ばせていただきたいと思います。

 1999年にアメリカのメドトロニック社が、皮下間質液中のグルコース濃度を測定し、SMBGの値を利用し血糖値に近づくように補正して血糖変動を連続して表示することが出来る、世界初のCGM機器であるCGMS GOLDという機器を作成して発売しました。これは非常に画期的な機器でありましたが、日本で認可されたのはなんと10年後の2009年、使用が可能になったのは11年後の2010年のことです。

 従いましてCGM機器の導入に関しては、世界と比べると、わが国は非常に遅れてしまっていたことは事実です。この初期に登場したCGMS GOLDの使い勝手があまりよくなかったため、2012年から同じメドトロニック社のiPro 2というCGM機器の使用が可能となりました。

 iPro 2は防水かつ小型でとても使い勝手が良いため、24時間の血糖変動を比較的簡単に測定することが可能となり、日本全国に普及しました。

 この頃からわが国でもCGMの市民権が得られてきたように記憶しております。

 

 その後2016年になり、それまでの機器と比較し安価で使い勝手の良い、フリースタイルリブレプロという機器が登場してきました。本機器は、センサーさえ装着すれば、2週間の長期にわたり一切操作することなく、血糖変動を記録してくれます。また機器の値段も非常に安価です。それまで使うことが可能であった CGMS GOLD もしくはiPro 2では血糖値と皮下間質液のブドウ糖濃度との値の誤差を補正するために、1日に2回から4回ほど、SMBGを行わなければいけませんでした。

 しかし、Freestyle リブレ Pro では、SMBGを施行する必要は一切必要ありません。円形のセンサーを腕に付けてしまえば2週間の血糖変動がすべて記録され、後日、可視化できるという、非常に便利な機械です。

 

 以上述べたきたきたCGM機器は、測定した結果を、後から解析して、振り返って見る機器です。理解しやすいたとえで言いますと、飛行機のフライトレコーダーや、自動車のドライブレコーダーに相当し、データを常に収集し、後から必要なデータを参照するという機器です。

 しかしながら、実際、患者さんにとって重要なのは、血糖変動が今どうなってるのか、より具体的に言いますと、今、血糖値が上がってるのか下がってるのかを"見える化"することです。

 自動車のカーナビは、自分が今どこにいるのか、北に向かっているのか、南に向かっているのか、教えてくれる。この血糖値版に相当する機器を想像してください。このような機器を、リアルタイム CGMと呼びます。

 日本では2017年からフリースタイル リブレ という機器が使えるようになりました。厳密には、血糖変動が、24時間常に見える機器というのがリアルタイム CGM 機器ですが、フリースタイルリブレは、その簡易版とお考えいただければと思います。

 フリースタイル リブレ自体は、データを読み取る小型の機器で、センサーに蓄えられたデータを吸い上げ、その結果をすぐに見ることが可能となります。具体的には、直近の血糖値、血糖値が上昇傾向にあるのか、下降傾向にあるのかをしめす矢印、過去8時間の血糖値の推移、が読み取り機の画面に表示されます。センサーに蓄えられたデータを見る限りは、血液を採取する必要は一切ありません。

 

 簡易版リアルタイムCGMとフリースタイルリブレを呼ぶ理由ですが、8時間以内ごとに、センサーをスキャンしないと、センサーの中に記録されているデータがどんどんどんどん上書きされてしまうため、それ以前のデータが消えてしまうという問題があること、センサーをスキャンしないと今の血糖値がわからないことです。

 しかしながら、以上のデメリットがあったとしても、センサーをスキャンすれば瞬時に、今の血糖値ならびに過去8時間の血糖値のトレンドを見ることができることは、非常に画期的です。

 また、Freestyle リブレのもう一つの欠点として、センサー装着後2日間の測定値の精度が低いと言うことです。Freestyle リブレは、あくまでも簡易型リアルタイムCGMですので、その良いところを生かして使用するという考えの基に使用していくべき機器でしょう。

 

 次に本当の意味でのリアルタイム CGM について述べたいと思います。

 リアルタイム CGM というのは常に血糖値が測定されている機器で、リブレのようにセンサーをスキャンしたときだけ血糖変動が表示される機器とは異なり、常に血糖変動を見ることができます。

 例えれば、フリースタイルリブレはボタンを押したときだけ、情報が表示されるカーナビのような機器、一方、リアルタイムCGMは常に情報が表示されている一般的なカーナビであると考えていただくと理解しやすいと思います。

 このリアルタイム CGM に関しては、メドトロニック社のガーディアンコネクトという機器が我が国で、承認されております。まだ、具体的な保険点数が決まっておりません。近日中に、保険点数が決定し使用することが可能になるのではないかと思います。

 この機械ですけれども非常にユニークなのは、必要な機器が、データを収集し送信する500円玉大のトランスミッターと、使い捨てのセンサーのみということです。

 情報を読み取るにはスマートフォンの iPhoneを 使用します。iPhoneしか使えないのは非常に残念であり、 Android に関してはもうすぐ対応できるようになると聞いております。この機械の非常に優秀な点は、常に血糖値を測定しておりますので低血糖になりそうだったらその30分前に予知アラームを鳴らしてくれる、高血糖になりそうだったらその30分前に予知アラームを鳴らしてくれるという機能があることです。この機能は、低血糖や 高血糖を予防する極めて強力なサポートとなり得えるため、無自覚低血糖で自動車等の運転ができない方にとっては、この機器の登場は朗報となる可能性があります。

 さらにこのガーディアンコネクトが大変優れているという点は、データを他のスマートフォンに転送できることです。

 たとえば、1型糖尿病の保育園児が、保育園の許可の元、この機器をつけて登園できる場合には、 ガーディアンコネクト経由でその測定データをお父さんお母さんのスマートフォンに送ることができるのです。

 ですからその値を、お父さんお母さんが見ていて低血糖が起きそうだということがわかれば、保育園に連絡して、対応をお願いできるという、非常に優れた機能を持つ機器が登場するということを知りおきいただきたいと思います。

 以上、CGMの最新情報について、述べてきました。血糖変動を"見える化"することにより、糖尿病診療が劇的に変化する可能性があることを実感していただければ幸いです。