歯周病と血管疾患 [薬学の時間]
2008/10/09(木) 00:00

印刷用PDF

薬学の時間
2008年10月9日放送分
「歯周病と血管疾患」
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科歯学系口腔病原微生物学分野教授
中山 浩次

歯周病は口腔内だけの疾患ではない
 口腔内の二大疾患は齲蝕と歯周病であり、一般歯科医院での治療はほとんどこの二つの疾患を対象にしています。齲蝕とは、歯に付着した細菌の代謝産物である酸によって、歯の硬組織のエナメル質、象牙質、およびセメント質が脱灰・破壊される疾患です。このところ、学童・生徒の齲蝕罹患率は年を追うごとに減少しています。一方、歯周病は歯の周りの組織が炎症を起こすことで始まり、最後には歯を支える歯槽骨が吸収され歯が脱落する疾患です。歯周病の症状には歯の周辺の溝が深くなる、いわゆる歯周ポケットの形成、歯肉からの出血の亢進、歯肉の退縮、歯間空隙の形成、歯槽骨の吸収があります。歯周病は生活習慣病の一つともいわれますが、基本的には歯の表面や歯周ポケット中にいる細菌によって引き起こされる疾患であることから、感染症の一つと考えられます。歯周病は現在、日本人における罹患率の最も高い感染症といっても過言ではなく、40歳以上の日本人の、40%以上の人が罹患しています。


血管・骨・脂肪-トライアングル [薬学の時間]
2008/03/06(木) 21:11

薬学の時間
2008年3月6日放送
「血管・骨・脂肪-トライアングル」
北野病院糖尿病・内分泌センター部長
越山 裕行

一見無関係のようにみえる三つの臓器に関連がある
 本日は「血管・骨・脂肪 トライアングル」という少し変わったテーマでお話します。
 「血管、骨および脂肪という全く異なった三つの組織の間にトライアングル、すなわち相互作用があり、それらを司る共通のホルモンあるいは遺伝子が存在する。この連関は三つの臓器に発生学的共通点があることに基づいていると考えられる。この連関を理解することにより新たな病態の解明とともに創薬にもつながる」というお話です。これは私が同じ京都大学医学部井村内科出身の先輩・後輩の先生方とともに立てた仮説です。


動脈硬化の第一段階としての血管内皮障害 [薬学の時間]
2007/11/20(火) 17:37

薬学の時間
2007年11月20日放送
「動脈硬化の第一段階としての血管内皮障害」
広島大学大学院医歯薬総合研究科創生医科学専攻探索医科学講座心臓血管生理医学准教授
東 幸仁

血管内皮が障害されると動脈硬化と抗動脈硬化のバランスが崩れる
 1980年に米国の生理学者であるFurchgottらにより、エポックメーキングな発見がなされました。これは内皮依存性血管弛緩因子というものですが、後にその本体は一酸化窒素(NO)という非常に単純な物質であることが判明します。NOは、その発見や、NO代謝の研究に対して、1998年にノーベル賞が授与されたことでもわかるように、動脈硬化におけるキープレーヤーの一つです。血管内皮に関する研究がスタートして30年近くが経過しました。これまでの膨大な知見の集積に加えて、現在も、血管内皮に関する基礎的臨床的な新たな発見や可能性が報告されています。動脈硬化においては、血管内皮機能が血管機能自体を制御し、動脈硬化の発症・維持・進展・破綻に、重要な役割を果たしていることが明らかとなってきました。特に、動脈硬化の第一段階として血管内皮障害の重要性が注目されています。したがって血管内皮機能を制御することは、心血管病発症を制御できるといっても過言ではありません。動脈硬化の第一段階としての、血管内皮機能障害の臨床的意義、血管内皮機能障害のメカニズム、予後規定因子として、あるいは治療ターゲットとしての可能性について、さらに詳しくお話したいと思います。